正解 ページ18
( A
寝返りを打った先に気配を感じて、目が覚めた。
重いまぶたをゆっくり、ゆっくりと開ると、隣に寝そべって私を見つめながら、あ、という顔をしたけんちゃんと目が合った。
「...ごめん」
起こしてもうたな。と聞こえるかどうかの音量で囁くけんちゃんに、微笑みを返す。
「...今帰ってきたの？」
「うん」
「おかぁりなさい...」
眠くて、舌がもつれてうまく言えない。
言葉を覚えたての子供みたいにあやふやな、甘ったれた声が出て、今度はけんちゃんが微笑んだ。
「なんてぇ？」
「ふふ。お帰りって言ったの」
「言えてへんかったで」
「あと...会いたかったって言ったの」
毛布の中でもぞもぞと手探りして、たどり着いたけんちゃんの手を握ると、握った途端に優しい力で引き寄せられて、体全体がその腕の中におさめられた。
定期的に刻まれる心臓の音が直接耳に響いて、メトロノームを聞いているみたいで更に眠くなる。
お互いが近くて、近すぎて、他にはなんにも見えない。聞こえない。
「そんなん言うてた？」
「心の中で言ったの」
「ふーん。そやったん」
私に負けないくらいの甘ったれた声でけんちゃんは言った。
遅くなるから先に寝ていて、というメッセージをもらって、その通りにすることに何の躊躇いもなくなった。
朝になれば隣に帰ってきてくれているわけだし、そんなことくらいでいちいち寂しくなったりなんてもうしない。
けんちゃんがちゃんとした形を取ってくれたおかげで、私は出会った頃よりもずっと強くなった。
そしてその頃よりもずっと、愛しく想う気持ちが増していた。
「毎日一緒にいるのにすぐ会いたくなるのって変かな」
「そんなことないんやない」
俺もやもん。と小さく呟いて私の頭を撫でる。
そして、額に触れるだけのキスを落とす。
それだけのことなのに、全身に電気が走ったみたいにビリビリ、熱くなった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 213人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「芸人」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
えむ(プロフ) - mugiさん» mugi様、コメントありがとうございます！続編に関しては、前向きに考えてみたいと思ってます☆新しいお話も進行中ですので、楽しんでいただけたら嬉しいです！また遊びにきてくださいね^_^ (2021年5月6日 23時) (
レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
mugi(プロフ) - 毎回更新を楽しみに待っていました。登場人物が個人的に大好きな方達ばかりだったので、とても楽しく拝読させていただきました!続編、需要しかないと思うのでぜひ!!新しいお話もどんな展開になるのか楽しみです(^o^) (2021年5月6日 0時) (レス) id: 354875201d (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - えみさん» えみ様、コメントありがとうございます！なんと嬉しいお言葉(T ^ T) 最後まで読んでくださって嬉しいです！今後ともぜひよろしくお願いします☆ (2021年5月4日 15時) (レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
えみ(プロフ) - 楽しく読ませていただきました。今まで読んだものでトップでよかったです！リリーさんが気付くコンビニからのシーンがすっっごい良かったです！しかも賢志郎くんも確信犯だった事も最高でした。次も楽しみに読ませていただきます (2021年5月4日 1時) (レス) id: 48f6541e7c (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - ハンナさん» ハンナ様、いつもコメントありがとうございます！あ、そうですね...その後どうなったのか私も気になります笑 やっぱりいつか続きを書きましょうかね！？毎回甘々ワードを考えるのが楽しかったので、反応していただけて嬉しいです☆ (2021年5月3日 23時) (レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：えむ | 作成日時：2021年4月16日 23時
