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「あれ。指輪してたっけ」
「あ、これ」
Aちゃんは自分の左の掌をひらひらと裏返しながら見た。
そのたびに指輪がキラキラと光る。
「ついこないだから、です。...まだちょっとはずかしいんですけど」
はにかみながらそう言って、うっとりと、また幸せそうに微笑んだ。
(...え、やば)
その笑顔が俺の胸にチクリ、刺さった。
「そら飲みに行ってもらえんわな」
ゆず兄が言う。
「旦那さんが羨ましいわ」
「ふふ」
「もし旦那さんおらんかったら俺とつき合ってくれてた？」
横で聞きながら思った。
あ、ゆず兄これちょっとマジやったんかな。
ふられたって言ってたけど、ちゃんと告ったんかな。
きっと俺にしかわからないだろうけど、表情を見てそう思った。
長年のつき合いだから、直感で。
「あ、俺は？」
俺も便乗して名乗りを上げると、Aちゃんは迷うことなく即答した。
「ゆずるさんはいいけど、リリーさんはイヤです」
「え、なんで」
「彼女がいるのに他の子にも声かけてるような人、好きじゃないです」
わはは、と俺の横でゆず兄が大笑いする。
「彼女さん大事にしてくださいね」
念を押すように、そして牽制するように言われて返事に詰まってしまう。
なんの悪気もない言葉に、バッサリと斬りつけられた気分だった。
「そんなん言われても、俺またあのカフェ行くで」
「はい。お待ちしてます」
それじゃあ、とAちゃんは行ってしまった。
取り残された男ふたり、顔を見合わせて苦笑いする。
「軽くあしらわれたな」
「...ですね」
「こんなん初めてちゃう？」
ニヤニヤしながら肩を叩かれて、何も言えなくなってしまった。
ゆず兄の言う通り、こんなの初めてだった。
軽い気持ちで声をかけたことを後悔しそうだ。
軽い気持ちが、ほんの軽い気持ちだったはずのものが、
少しずつ大きくなって心の中を占拠しはじめていることに気づいてしまった。
気を取り直して歩き出してからも、思いっきりの正論で斬りつけられた痛みと、指輪を嬉しそうに見つめて笑ったあの顔が俺の胸に刺さったままだった。
その夜、彼女からかかってきた電話を無視してしまった。
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えむ(プロフ) - ハンナさん» ハンナ様、コメントありがとうございます！甘いかどうか気になっていたので、そう言っていただけて安心しました！#3も楽しんでいただけるようがんばりますね^_^ (2021年4月15日 23時) (
レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
ハンナ(プロフ) - 甘いー…甘くてステキなお話をいつもありがとうございます… 楽しみで楽しみで終わってほしくない…！です (2021年4月15日 1時) (レス) id: 9d1b7de85f (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - ゆずさん» ゆず様、いつもありがとうございます！^_^ (2021年4月4日 18時) (レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - あぁどうなるでんしょう…いつもドキドキしながら読ませてもらっています！ (2021年4月3日 15時) (レス) id: f338c2e715 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えむ | 作成日時：2021年3月20日 23時
