そんなの無理 ページ17
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午前中に家でけんちゃんを見送って、家の掃除や整理を少ししてから出勤して。
今日からしばらくは帰ってもけんちゃんには会えないのだと思うと、仕事もはかどらない。
実際、お客さんに向かって笑顔をつくるのにも少々疲れてしまったし。
こんなの社会人失格だとわかってはいても、私のやる気はすべてと言っていいほど大好きなその人によってコントロールされているようなものだから。
「休憩行ってきまーす」
午後の休憩時間になり、スタッフに声をかけて、店を出る。
エプロンを外し、シャツにカーディガンをはおったいつもの休憩中のスタイルで歩き、近くのショッピングビルに入った。
立ち並ぶショップの間を通り過ぎ、奥のエレベーター前で立ち止まる。
特に目的はないのだけれど、そういうときはだいたい上階の本屋で時間を潰すのが常だった。
ドアの上の階数表示はB2を示していた。
地下から上がってくる。
少し待ってエレベーターが到着した。
ドアがゆっくりと開いて、隙間から明るい光が溢れる。
その光に誘われるように視線を向けると、開いたドアの向こう側にいた人と目があった。
「...あ、」
「あ、」
殆ど同時に声が出ていた。
乗っていたのはリリーさんだった。
他には誰もいない。
乗り込もうとしていた足が思わず止まる。
「乗らんの？」
「...あ、ハイ」
声をかけられて、後には引けず、乗り込んだ。
「何階？」
「６階です」
リリーさんは私をチラッと見てから６のボタンを押した。
８階が既に押されていたので、目的地は違うようだ。
今日も東京にいるんだ。
最近よく来ているみたいだけど、それにしてもこんなに頻繁に会うなんて。
毎日通う職場の近くに劇場があるのだから、仕方ないと言えば仕方ないのだろうけど。
「休憩中？」
「...はい」
「おつかれ」
「...はい」
淡々と言葉を交わしてすぐに無言になった。
仕事中に何度も話しかけられたときのことを思い出すと意外に思えてしまうほど、今日のリリーさんは無口だった。
お互い会話を切り出すこともなく、静かにエレベーターは上昇していく。
手持ち無沙汰だった私は、階数表示が２、３、４...と変わっていくのを黙って見つめていた。
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えむ(プロフ) - ハンナさん» ハンナ様、コメントありがとうございます！甘いかどうか気になっていたので、そう言っていただけて安心しました！#3も楽しんでいただけるようがんばりますね^_^ (2021年4月15日 23時) (
レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
ハンナ(プロフ) - 甘いー…甘くてステキなお話をいつもありがとうございます… 楽しみで楽しみで終わってほしくない…！です (2021年4月15日 1時) (レス) id: 9d1b7de85f (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - ゆずさん» ゆず様、いつもありがとうございます！^_^ (2021年4月4日 18時) (レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - あぁどうなるでんしょう…いつもドキドキしながら読ませてもらっています！ (2021年4月3日 15時) (レス) id: f338c2e715 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えむ | 作成日時：2021年3月20日 23時
