ずっとそばにいたいのに ページ14
( けんしろー
アラームの最初の２秒で目が覚めて、５秒目にはストップボタンを押していた。
目をうっすらと開けると、隣にはすやすやと眠るAの寝顔。
耳に流れてくる定期的な呼吸音で、アラームの音に気づいていないことを確かめた。
よかった。起こしてしまわなくて。
今朝も早くから仕事に行かなくてはいけなくて、自分だけ先に起きなくてはならない。
目覚めることには成功したけれど、ここからが勝負。
ここからが、長くなるのだ。
(...かわい)
Aの安らかな寝顔を見てしまうと、いつもそう。
途端に動きたくなくなってしまう。
ここからが長くなる。
社会人としての理性と夫としての感情との戦いになる。
(あと何分いけるかな...)
スマホで時間を確認して、頭の中で逆算する。
何時に着けばいいから、何時に家を出ればいい。そうすると最低でも何時までに起き上がれば...
この後の行動のすべてがギリギリになるとしても、今Aに触れていられるこの時間が惜しい。
(まだ大丈夫。もう少しだけ)
誰かに言い聞かせるように頭の中で呟いて、Aの頬にそっと触れる。
反応がなくて、次に腕を背に回して抱きしめてみる。
熱いくらいの体温を感じて、愛おしさで胸がいっぱいになった。
気にしていないふりをするのも、疲れるものだ。
ずっと見張っているわけにもいかないしそんなの気色悪すぎるから、あとは信じるだけしかできなくて。
誰もここに入ってくるな。
俺とAの間に、誰も。
そう言いたくても言えないもどかしさで、どうにかなりそうだ。
勝手に浮かんでくる厄介な後輩の顔を必死に消して、抱きしめる腕に力を込めた。
起こさないように、注意を払って、少しだけ。
(...水田となんか話してんのも、ほんまは気づいててんぞ)
仲良く洗い物をしていたふたりの背中を思い出す。
会話の内容まではわからなかったけれど、その直前のAの態度からして、だいたいのことはわかっていた。
聞きたいような聞きたくないような複雑な思いで、俺は結局知らん顔をするしかできなかった。
俺に聞かれないようにこそこそ話すってことは、そういう話だったのだろうし。
わかりやすいねん、ふたりとも。
(...あー。女々し)
あの後輩にも、この世の中にも、堂々とできたらどんなに良いか、と思う。
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えむ(プロフ) - ハンナさん» ハンナ様、コメントありがとうございます！甘いかどうか気になっていたので、そう言っていただけて安心しました！#3も楽しんでいただけるようがんばりますね^_^ (2021年4月15日 23時) (
レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
ハンナ(プロフ) - 甘いー…甘くてステキなお話をいつもありがとうございます… 楽しみで楽しみで終わってほしくない…！です (2021年4月15日 1時) (レス) id: 9d1b7de85f (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - ゆずさん» ゆず様、いつもありがとうございます！^_^ (2021年4月4日 18時) (レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - あぁどうなるでんしょう…いつもドキドキしながら読ませてもらっています！ (2021年4月3日 15時) (レス) id: f338c2e715 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えむ | 作成日時：2021年3月20日 23時
