. ページ44
.
「賢ちゃん、昔から聞き上手やもんな」
ニコニコと俺とAを交互に見て、ゆずるが言う。
「でも、賢ちゃんからの愚痴は聞いたことないやろ？」
「そういえば、そうかなぁ」
「あんま言わへんもんなぁ。愚痴だけやなくて...まだ繋がってたなんて、全然知らんかったし」
それから、意味ありげに元カノを見て、また俺を見る。
「別れても仲ええのって、なんかええよな」
「仲ええっていうか...喧嘩別れしたわけでもないし」
「そもそもなんで別れたんやったっけ？そういうのも賢ちゃん、ちゃんとおしえてくれんやん」
「そら、いろいろあるやん」
「てか、まだ繋がってるんやったら別れんでもよかったんちゃう？」
光線銃のように、ゆずるの疑問がバシバシと飛んでくる。
その光線を受けて、元カノがおどけたような口調で返した。
「それ以上はプライバシーの侵害でーす」
「えー」
「賢ちゃんやって、言えないことのひとつやふたつあるんですー。なー？」
「まあ、うん」
俺に同意を求める元カノはきっと無意識だろうけど、俺にしてみれば心当たりがありすぎて、苦笑するしかない。
「年中オープンなゆずるさんにはわからんかもしれんけど」
「えーなによ。失礼な」
今度はゆずるが大袈裟に膨れて見せた。
「俺やっていろいろあるって」
「そうなんー？いろいろって？」
「それは言えんけどさぁ」
そう言って、手元のグラスに視線を落とした。
その途端、さっきまでの勢いが鳴りを潜めて、ゆずるの体が急に小さく萎んだように見えた。
グラスに止まったままの視線に気づいて、Aが横からゆずるに向かって言う。
「ゆずくん。次、何にする？」
「んーと...ワイン」
「赤でいい？」
グラスの中は、空になるまで後ひと息、といったところだった。
ついでに俺や元カノにも注文を確認して、Aは店員の呼び出しボタンを押した。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 160人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「芸人」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
えむ(プロフ) - ゆずさん» いつもありがとう☆コメント嬉しいです^_^ (2021年10月10日 23時) (
レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - HanNAさん» いつもありがとう☆今回も楽しんでもらえるように頑張りまーす！ (2021年10月10日 23時) (レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - これからの展開にドキドキします！楽しみです( ´∀｀) (2021年10月9日 21時) (レス) @page16 id: f338c2e715 (このIDを非表示/違反報告)
HanNA(プロフ) - お疲れ様ですー☆ やっぱりえむちゃんすごい…です…読んでいてバクバクする！これから楽しみです！ (2021年10月9日 1時) (レス) @page16 id: 9d1b7de85f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：えむ | 作成日時：2021年10月2日 23時
