melty / りりー〈request〉 ページ20
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「テキトーに座っとって」
「あ、ハイ」
そっけなくスマホに目を向けてしまうリリーさんの横顔を見つめて、気づかれないように、深く深呼吸をした。
(...とうとう、来てしまった...)
憧れだった人の部屋。
右を見ても、左を見ても、そこに在るのはリリーさんの存在感。
着ているところよく見る上着、最近描き終えたとTVで紹介された絵、好きだと言っていたお酒の瓶。
自分の目で本物を見ていることが信じられなくて、まだ、夢見心地。
さっきからずっとそわそわ、そわそわ、落ち着かない。
「ごめん」
くるりとこちらに顔を向けてリリーさんが言う。
「仕事のメール来とったから」
「はい」
「でももう終わったから」
ノールックでスマホをテーブルの下に置く。
置くというか、隠すように自分の足元の陰に滑らせて、私の視界から消した。
「ごめんな。...怒っとる？」
不安が顔に出ていたのだろうか。
リリーさんが私の顔を覗き込んで言った。
「怒ってない...けど、」
「けど？」
「...なんでもない」
声になる寸前で、言葉を飲み込んだ。
(..."隠す" とか、そんなこと思っちゃダメだよね...)
よくない噂もたくさん聞いた。
今のが本当に仕事のメールなのかどうかも、確かめる術は、私にはない。
だけど信じることしかできないし、何があったって、結局は受け止めるだけ。
何より、私は、ありのままのこの人が好きだ。
「何考えとるか知らんけど、言わんでええの？」
「...うん」
「わかった。...おいで」
手を引かれて、ぎゅっと腕の中に収められた。
(...あー、このにおい...)
初めて手を繋いだときも、初めて抱きしめられたときも、初めてキスされたときも。
そばにいるといつも感じる、正体のよくわからない、この、甘いリリーさんのにおい。
思いきり胸いっぱいに吸い込んで、心地よさに目を閉じた。
初めて会ったときから、このにおいが、私の体に染みついて離れない。
「ほんまに今日楽しみにしとった」
「うん...」
「Aのこと一晩中見てられる」
張りのない、プライベート感満載の低い声に、ドキドキ、ドキドキ。
私を包む腕の力がふと緩んで、顔を見ようと視線を上げた。
じっと私を見ていた、いつものちょっと眠たそうな目と目が合って、心臓がどくん、と跳ねた。
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えむ(プロフ) - HanNAさん» こちらこそいつもありがとう☆また来年もよろしくです！！ (2021年12月31日 8時) (
レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
HanNA(プロフ) - えむちゃん、いつも素敵なお話ありがとうございます！よいお年をお迎えくださいー (2021年12月29日 1時) (レス) @page26 id: ea9d2e9102 (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - みかみかさん» コメントありがとうございます☆あー、良かったですー。喜んでいただけて、ほっとしました^_^ いろいろ想像しながら書くのが楽しかったです☆こちらこそ良い機会をありがとうございました。是非またどうぞです☆ (2021年11月6日 20時) (レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
みかみか - 早速読ませていただきました！！もう最高でした！キュンどころじゃないですズッキュン心ぶち抜かれました（笑）えむさんの言葉選びほんとに好きです！素敵なお話ありがとうございました(T▽T) (2021年11月6日 6時) (レス) id: b0f25e0f76 (このIDを非表示/違反報告)
みかみか - えむさん» はい！もちろんゆっくりで大丈夫です！読んだ後感想も書かせて頂きます！素敵な作品お待ちしてます！ (2021年11月1日 23時) (レス) id: b0f25e0f76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えむ | 作成日時：2021年9月19日 22時
