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「なあ、A」
ソファーに座って声をかけると、ビール代わりのお茶をタンブラーに注ぎながら、Aが顔を上げる。
「こっち来て。...話があんねん」
「うん、今行くよ」
ゆっくりとやってきてタンブラーを目の前に置き、俺の右隣に座る。
俺を見て嬉しそうに微笑むAに、緊張感がほんの一瞬、癒された。
「話してもええ？」
「うん。どうしたの？」
Aの手を取って、ぎゅっと握った。
「ちゃんとしてきた」
「え？」
「ちゃんと別れてきた」
「彼女と」とつけ加えると、Aの顔色がさぁっと変わる。
焦りと困惑、それに恐れ。
いくつかの複雑なものが混ざり合った、なんともいえない表情だ。
ふと左頬に触れると、またズキズキと痛みが蘇ってきた。
その瞬間の、怒りと涙に満ちた、彼女のあの瞳も。
「これは罰ゲームやなくて、その結果」
「...彼女にやられたの？」
「うん。平手打ち。思いっきりな」
はは、と笑う俺とは反対に、Aの顔は曇り続ける。
これも想定の範囲内だ。
他の誰かの不幸を、優しいAが手放しで喜ぶはずがない。
「彼女にはなんて言ったの？」
「 "他に好きな人ができた" 」
「そんな言い方」
俺の言葉に、Aはこの世の終わりかのような絶望的な表情になる。
「だって嘘つかれへんし」
「そうだけど...」
「こんな気持ちでつき合ってくのも、無理やし」
順番が逆だったら、と、何度思ったか。
Aと出会ったときにはもう、俺には彼女がいた。
彼女がいるのに、Aを好きになってしまった。
心変わり。本当だったらあってはならない関係。
でも、ブレーキをかけようとするもうひとつの心とは裏腹に、深みに落ちるのはあっという間で。
少ない時間の更に隙間を縫って、何度もAに会いに来た。
最初はほんの数時間だったのが、いつからか夜明けを共にするようになっていた。
日を重ねるごとに、離れるのがつらくなった。
そのうちに、自分でもごまかしがきかなくなっていた。
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えむ(プロフ) - HanNAさん» こちらこそいつもありがとう☆また来年もよろしくです！！ (2021年12月31日 8時) (
レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
HanNA(プロフ) - えむちゃん、いつも素敵なお話ありがとうございます！よいお年をお迎えくださいー (2021年12月29日 1時) (レス) @page26 id: ea9d2e9102 (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - みかみかさん» コメントありがとうございます☆あー、良かったですー。喜んでいただけて、ほっとしました^_^ いろいろ想像しながら書くのが楽しかったです☆こちらこそ良い機会をありがとうございました。是非またどうぞです☆ (2021年11月6日 20時) (レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
みかみか - 早速読ませていただきました！！もう最高でした！キュンどころじゃないですズッキュン心ぶち抜かれました（笑）えむさんの言葉選びほんとに好きです！素敵なお話ありがとうございました(T▽T) (2021年11月6日 6時) (レス) id: b0f25e0f76 (このIDを非表示/違反報告)
みかみか - えむさん» はい！もちろんゆっくりで大丈夫です！読んだ後感想も書かせて頂きます！素敵な作品お待ちしてます！ (2021年11月1日 23時) (レス) id: b0f25e0f76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えむ | 作成日時：2021年9月19日 22時
