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「川西さんて真面目ですね」
「そう?」
「飲みに行くくらいいいか、ってフツー思いそうなのに」
「まあなぁ」
「うまくいくといいですね」
「うん。ありがと」
話すべきことをすべて話し終えた頃には、笑顔が戻っていた。
Aは相変わらず自分の仕事をしていて、俺のほうに見向きもしない。
おそらくこちらの会話は聞こえていたのだろう、と思う。
俺に心配そうな目を向けることはもうなかった。
会話が途切れたタイミングで客が来て、彼女は接客に行ってしまった。
ふたりの空間になって、Aが俺を見る。
会話はできなかったけれど、アイコンタクトで「ちゃんと言ってくれてありがとう」
そう言われた気がした。
「お、けんちゃんがおる」
不意に声がして入口のほうに顔を向けると、俺のよく知っている客が入ってきたところだった。
「おつかれー」
「おー」
「賢志郎さんやぁ」
ゆずると、その隣に亜生もいた。
まためんどくさい奴らが...
いや、ゆずるはもう違うか。
「Aちゃん、会いに来たでー」
「あ、いらっしゃいませー」
カウンターの中にいるAの前に一目散にやってくる亜生の横で、ゆずるは涼しい顔をしていた。
明らかに今までとは違う反応。
「お疲れさん」
「こんにちは、ゆずるさん」
ゆずるとAがお互いを見て微笑み合っているのを横で見ていても、もう嫉妬は感じなくなった。
俺の中にも間違いなく変化があった。
いろいろあったけれど、Aとちゃんと話して本当に良かった。
「Aちゃん今日もかわいい!」
「あは。ありがとうございます」
亜生だけは相変わらずAに近づこうと息巻いているようだけど。
尻尾ふってる犬みたい、って表現はこういうことを言うのだろうと思う。
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えむ(プロフ) - ゆずさん» ゆず様、ありがとうございます☆また遊びに来てくださいね。よろしくお願いします^_^ (2021年3月19日 21時) (レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - 毎回楽しく読ませて頂きました!#2も楽しみにしていますね! (2021年3月19日 10時) (レス) id: f338c2e715 (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - ゆずさん» ゆず様、コメント嬉しいです!ありがとうございます! (2021年3月8日 23時) (レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - 毎回楽しみに読ませてもらっています。これからどうなるか…楽しみです^_^ (2021年3月8日 17時) (レス) id: f338c2e715 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えむ | 作成日時:2021年2月28日 21時