いろいろあったけれど ページ48
( けんしろー
夕方の舞台の前に向かいのカフェに行ったら、いつものようにカウンターの中にAがいた。
「いらっしゃいませ」
「どーも」
俺に気づいて嬉しそうに、でも家の中とは違う仕事中の表情で微笑む。
俺も俺で、外用の顔でそれに応えた。
Aとの挨拶もそこそこに、店の中を見渡す。
今日会いたかったのは、Aではなくて。
Aに仕草だけであっちあっち、と指差され、見ると、尋ね人は店の真ん中あたりのテーブルを拭いて整えているところだった。
例の同僚の子だ。
少し黙って見ていると、彼女はダスターと消毒用のスプレーを手にカウンターの中に戻ってきた。
そして、そこに突っ立っている俺を見て驚いた顔をした。
「川西さん、」
「どーもー」
俺が言うのもおかしいけれど、何かすごくいいものを見つけたように嬉しそうに笑う。
これからする話のことを考えると、俺は申し訳なくなってしまう。
Aは知らないふりをして自分の仕事を続けていた。
「忙しい？」
「いえ、これからですかね」
「ちょっと話してもいい？」
「はい」
「こないだの話なんやけど」
いきなり本題に入るのもどうかと思ったけれど、ぐずぐずしていると、混んできたらこんな話していられなくなる。
Aがチラリと横目でこちらを見たのが視界に入った。
「ごめんやけど、俺、女の子と飲みとか行かれへんのよ」
「え...」
「あのときつい行くって言ってもうたんやけど...」
さっきまでの笑顔が消えていく。
サーッと音が聞こえそうなくらい、一気に。
面と向かって断るのってこんなに勇気がいるものなのか。
こんなことなら、Aの言うようにあんな安請け合いしなければよかった。
一番嫌な思いをしているのは、間違いなく目の前の彼女なんだけど。
「俺な、今好きな人がおって」
「好きな人？」
「他の子とどうこうって考えられへんねん。だから...ごめんな」
「そうですか...」
「内緒やで」
口元に人差し指を立てて、しー、と言うと、くすっと笑ってくれて少しホッとした。
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えむ(プロフ) - ゆずさん» ゆず様、ありがとうございます☆また遊びに来てくださいね。よろしくお願いします^_^ (2021年3月19日 21時) (
レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - 毎回楽しく読ませて頂きました！#2も楽しみにしていますね！ (2021年3月19日 10時) (レス) id: f338c2e715 (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - ゆずさん» ゆず様、コメント嬉しいです！ありがとうございます！ (2021年3月8日 23時) (レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - 毎回楽しみに読ませてもらっています。これからどうなるか…楽しみです^_^ (2021年3月8日 17時) (レス) id: f338c2e715 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えむ | 作成日時：2021年2月28日 21時
