. ページ46
.
「迎えに来させちゃってごめんね。友達にバレちゃったし...」
「えーよ、俺が行く言うたんやし。信用できそうな子やったやん」
「うん、それは大丈夫だと思う」
「Aの友達にも会ってみたかったしな」
親友には本当に感謝しかない。
さすが、私のことを昔からよく知ってくれている。
驚かせてしまったけれど、あんな形でも私の大好きなふたりを会わせることができでよかった。
そうだ。友達と言えば...。
「あのね、私、ちゃんとお断りしたよ。ゆずるさんのこと」
「そっか」
「彼氏じゃなくて、結婚してるって言った。ゆずるさんに嘘つきたくなかったから」
「うん。そのほうがええな」
けんちゃんが頷いてくれたので、ようやくゆずるさんの件を終わらせることができた、と思った。
けんちゃんと同じくらい優しいゆずるさん。
素敵な人と幸せになってくれたらいいな。
「あ、そうや。お土産があるんよ」
私の体に巻きつけていた手を離してけんちゃんは言った。
ソファーの脇に置いていたバッグに手を伸ばし、中を覗き込んで探っている。
「はい」
目の前に差し出された掌の中には、深い赤色の箱。
見ただけで中身が何かわかって、私は言葉を失った。
「ごめん、勝手に選んでもうたんやけどさ」
そう言いながらけんちゃんがそっと箱を開けると、中からピカピカに煌く指輪が、ふたつ。
「飲食業て指輪NGやん？俺もつけれんし、要らんって思てたけど、」
「.....」
「やっぱり、こういうのはちゃんとしといたほうがええと思って。...はい、手」
けんちゃんは私の左手を取り、ふたつのうちの小さいほうの指輪をゆっくりと近づけた。
少したどたどしいその手つきを私は黙って見ていた。
びっくりして、緊張して、息が止まりそう。
こんなことになるとは想像もしていなくて、戸惑いの混じった喜びで胸がいっぱいになった。
指輪は測ったかのように私の薬指にぴったりで、またびっくりした。
「...すごい。ぴったり」
「後で直せるて言われたけど、どう？」
「ううん、これでいい。よく私のサイズわかったね？」
「いっつもAの手触ってるから、なんとなく。わかるもんなんやなぁ」
左手に光る指輪を見て、ははっと笑うけんちゃんを見て。
私、本当にこの人と結婚したんだ。
そう思ったら、自然と涙が溢れていた。
私の頬を涙が伝う様をじっと見つめて、けんちゃんは優しく指で拭ってくれた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 273人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「芸人」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
えむ(プロフ) - ゆずさん» ゆず様、ありがとうございます☆また遊びに来てくださいね。よろしくお願いします^_^ (2021年3月19日 21時) (
レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - 毎回楽しく読ませて頂きました！#2も楽しみにしていますね！ (2021年3月19日 10時) (レス) id: f338c2e715 (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - ゆずさん» ゆず様、コメント嬉しいです！ありがとうございます！ (2021年3月8日 23時) (レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - 毎回楽しみに読ませてもらっています。これからどうなるか…楽しみです^_^ (2021年3月8日 17時) (レス) id: f338c2e715 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：えむ | 作成日時：2021年2月28日 21時
