人間じゃない ページ22
「あいつ…どこいったんだ…？？」
ふと、窓が空いていることに気づいた
「もしかしてここから落ちたのか…」
この部屋から下までかなりの高さがある、落ちたら軽い怪我では済まないだろう
阿「あ、舘様戻ってたんだ」
「阿部！？お前どこに行ってたんだよ」
阿「あ…ちょっと我慢で出来なくて先に頂いちゃったんです」
「"頂いちゃった"って…何を」
異様な威圧感、先程の無垢な青年ではないような感じ
阿「舘様…俺もう人間じゃないんだよ？」
「はぁ…？どういうこと…」
人間じゃない…って……まさか
阿「もう貴方と同じ存在…なんです」
翡翠色に染まる瞳に透き通るほど真っ白な肌。そしてニヤリと笑う口元から見える二本の牙
自分と似た容姿をしている
「そんな…馬鹿な！？いつから」
阿「助けてくれた時に違和感がしたんです。自分の体の中で何か起こっているって」
助けた時…俺の腕に齧り付いた時か
阿「あの時はまだ人間を保っていました。でもだんだん苦しくなっていたんです」
「……っ！」
阿「そして唐突な吸血衝動に駆られ完全な吸血鬼になったんです」
嘘みたいな話。でも目の前の嘘偽りない話し方と目。信じられなかった
阿「吸血鬼は伝承で聞いたことありました。でもまさか自分がなってしまうなんて…」
淡々と話が進む
阿「俺は吸血鬼になったことを後悔しません。むしろまた生きていける、純粋に思いました。だから舘様には感謝しかないんです」
「……本当か…？心の底からそう思っているのか？」
阿「もちろんですよ。ただ―」
ただ…？
阿「心残りがあるとしたらあいつらを滅ぼしたい。とは思いますね」
「あいつらって神父か？」
阿「当たり前じゃん、俺が死んだのは誰のせい？って話」
さっきとは違う雰囲気
阿「あぁ、そうか。この授かった力で一人残らず殺してやろう…それがいい……ふふふふ！！」
人間はある程度の限界を超えると恐ろしい狂気じみた魔物と化する
今その言葉をすごく感じる
阿「ま、そういうことでこれからは一人でやっていけるから」
「阿部！待てよ…」
阿「今までありがとうございました！」
風のように去っていった
「人間を吸血鬼にする方法成功しちゃったんだな…」
自分のやったことを悔やんだ
「人間なんてろくな奴いない…関わるのはもううんざりだ」
それから教会の神父が立て続けに変な死に方をしていると風の噂で聞くようになった
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作者名：雨乃ふあ | 作成日時：2020年7月24日 21時
