雨２（ジュノ） ページ29
「・・・なんかさ、オレの知らないところでもさ、
そうやってオレのために、オレのスタッフに心を配ってくれて。
オレはあいつに何もしてあげられないのに。
そう考えると、時々自分自身がイヤになるよ」
珍しく、っていうか、ふたりきりで話をするのは初めてだ。
この人に、Aへの想いを言っても、仕方ないのに
言葉が次から次へと、溢れた。
聞き上手な人なんだと思った。
そして、頭のいい人。
「ここ最近のように忙しくなると、全然会えないし。
時間があるときでも、外歩いて、どこか行ったりって
普通のカップルのようにデートもできないし。
いっぱい我慢させて、心配させて。そんな男、普通は嫌だろ？」
「そういうふうに、Aさんが嫌がるの？
文句、言うの？」
「言わない」
「ジュノが忙しいの、Aさんもわかってるからでしょ？」
「わかってるよ、Aは。
でも、オレ。
わかってほしいんじゃないんだ。
嫌な思い、させてるのがイヤなんだ。
我慢させたり、心配させたり。
だけど、どうしようもないことにイラつくんだ」
だけど、どんなにイラついても。
答えはひとつしか、ない。
オレのどうにもならない気持ちを汲み取ったのか
ヌナは、以前から言いたかったことがある、と
話をそらした。
日本のお菓子の話。
ああ、Aも好きなお菓子だ。
会えなくて、どれだけ離れていても
想うのは、Aのことだ。
たとえ、目の前に誰がいたとしても。
「ジュノ、雨・・好き？」
「ん？雨？んー、髪が湿気でぐしゃぐしゃになるからなー。
あまり好きじゃない」
それはAの言葉だ。
雨のおかげでこのあいだはAと過ごせたんだ。
映画の撮影も中止になり、Aは帰るのをやめて。
本当は、嫌いじゃない。
「そうなんだ。私は、雨、好き。
雨の音を聴いてるの、好きなの」
なんとなく、わかる。
落ち着く音だと思う。
小雨になった時、オレたちはみんなが待つ、離れの控え室へとむかった。
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作者名：ミイ
| 作成日時：2015年4月24日 11時
