忘れ物（ジュノ） ページ19
手に持っていた携帯をポケットに押し込み、オレはつぶやいた。
「携帯忘れた、先乗ってて」
「うん、わかった。ヌナ、行こ」
すぐに部屋へ戻り、ドアを開けると、Aがしゃがみこんでいて
泣いてるのかと思った。
だけどそうじゃないことは、すぐにわかった。
目を丸くしたAが、すぐに立ち上がったから。
思わず何も言わず、すぐに、くちびるを重ねた。
「・・・どうしたの？忘れ物？」
「うん」
もう一度、強く、さっきより強く。
拒否しないAは、素直にオレに抱きついた。
そして、唇を先に開いたのは、A。
舌を絡ませるより先に、くちびるに吸いつくと
小さく喘いだ。
くちびると舌の感触を確かめる。
顔の角度を変えると、その度に目をあけたままのAと視線が重なる。
まるで、始まりの合図のように。
「コレ？」
「ん？」
「キスしたかったの？」
「うん」
「・・・私もしたいと思ってた」
そう言って、首にまわす腕に力が入り、
自ら、舌を絡ませる。
くちびるだけではなく、吐息が重なる。
こんなにお互いを求めてるのに、Aは、あっさりとくちびるを離した。
「時間、大丈夫？」
「ったく。スイッチ入っちゃったよ」
「今、していく？」
「や、数分でAを満足させられる自信、ないからやめとく」
「じゃー、続きは今度、ね」
「うん。気をつけて帰れよ」
「ありがと」
最後に、また、少しだけ、くちびるに触れる。
離れる瞬間が切なかったのか、オレのくちびるを
視線が追いかけているのがわかる。
熱いキスのわりに、さっぱりした言葉。
どんな言葉、飲み込んだんだよ。
と、思ったけど、オレも口にしなかった。
気持ちだけ残して、ドアを、閉めた。
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作者名：ミイ
| 作成日時：2015年4月24日 11時
