◆ ページ8
「うがっ……うっうっ」
「寝ちゃダメよー………ん?」
なんだろう。今一瞬誰かに見られてるような気配を感じた。キョロキョロと周りを見て、お股の間から後ろを覗き込む。
んにゃー? あんなところにドラム缶なんてあったかー?
頭を起こしてポキポキと首を鳴らし、面倒くせえけど後で厄介なのは更に面倒なことになるって分かってるから、ドラム缶を調べる為に近付く。
うーん、やっぱり此処にドラム缶はなかった。あっちから〜こっちに移動してんじゃん。てことはこれ………ヒョイッと後ろを覗き込む。
「っひゃ……!!」
_____居たね。女が。
お下げ髪の眼鏡を掛けた地味な感じの。女は腰を落としてビクビクと俺を見上げてる。
そして俺はそんな女を冷めた目で見下ろしながら、ある一点が気になった。
ぽっこりと大きなお腹だ。………妊婦さん?
「君、もしかして依頼者?」
「きゃっ……あのっ、本当なのかっ…確認したくて、この目で……ごめんなさいっ」
「…………」
震える手がお腹を庇うように包み込む。
カチカチと噛み合わない歯を鳴らす女に顔を近づけて、じっーと探る。と言っても俺は深くフードを被ってっから相手の顔をしっかり確認はできない。
顔を見られたら殺すしかない、かな。
背中の後ろにナイフを隠してどうしようかと考えていると、「はっ、うあっ」と男が逃れようともがく。俺は振り返った。
………無理に決まってんのに頑張ってんな。
足がほぼ使い物になっていない今の状態で逃げようなんて思うんだね。
「ねえ、お姉さん。見たよね?」
「う、あっ……見てません」
「ええっ、絶対嘘じゃん!」
くるっとナイフを持ち替えてビュンと背後へ投げた。
「うぁっ……」と、聞こえた呻き声に女は息を飲む。
「見たね?」
「………っ…」
「しー。誰にも言わない。言ったら……どうなるか分かるよね?」
後ろで心臓を一刺しされて死んでる男と同じ末路を辿ることになっちゃうよ。
女は静かに、ゆっくりと頷いた。
俺はにっこりと口角を上げる。
「いい子だね。これで任務完了。ご依頼ありがとうございました! 動画は……その目で見てるし要らないよね」
「は、はい……」
立ち上がって「早く帰って全部忘れなね。それが君の為だよ」と伝えて去る。
あーあ、やっぱり虚しい。
殺してる瞬間だけは生きてる感じはするのに、命を奪ってしまうと全てが無になってしまう。
俺はまた囚われる。
あの日あの時から動くことの無い時の中に。
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ゆきんこ(プロフ) - 悠砂さん» コメントありがとうございます!最後まで読んでもらえて嬉しいですし、続きを読みたいと思ってもらえたことも嬉しいです!続きを書くとしたら、今回のようなスピードでは書けないかもですが書けるように頑張りたいと思います😌ありがとうございました! (2022年8月8日 22時) (レス) id: 81b6eaa049 (このIDを非表示/違反報告)
悠砂 - こんばんは。最後まで読ませていただき、続きが読みたいと思いました。ベッターでも占ツクでもいいので、続きが読めると嬉しいです!他の作品もあるので、大変かとは思いますが、ゆきんこさんの作品はとても好きなので、楽しみにしています。 (2022年8月7日 22時) (レス) @page44 id: cf5d43c431 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - みぃ。さん» みぃ。さーん!気にしてくれてる方いたー!って喜びの舞を踊ってます私😂 誰も気にしてないかぁって思ってたんですが、この伏線大好き女の私なので何かあるって思ってもらえないかなぁとか(笑) やる気出ました!頑張ります!! (2022年8月6日 23時) (レス) id: 81b6eaa049 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - あきさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます😊 その言葉励みに頑張っております!! (2022年8月6日 23時) (レス) id: 81b6eaa049 (このIDを非表示/違反報告)
みぃ。(プロフ) - ゆきんこさーん!途中でコメント入れるのはお久なのですが、中編まで公開、お疲れ様です!いや、私気になってんですよ、お兄。←コレが言いたくてコメントしました🤣後編も楽しみにしてます! (2022年8月6日 19時) (レス) id: fb4296a570 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆきんこ | 作成日時:2022年8月4日 7時