Sleeping Beast【桃】

◆ ページ13

秀平くんが動き始めて少ししたら、黒服の人が歩き始める。
やけに派手で目立つ人だった。髪はピンク色と派手でサングラス。服は白と黒でシックな感じのモデルさん？ と思うくらい素敵な雰囲気だったから流石に彼がエスなわけはないと思った。
けれどそのピンク髪の彼は、秀平くんにバレない距離を保ち、けれど堂々も後をつけていた。

あれだけ堂々としているからこそ不審がられていないのか、それとも秀平くんが馬鹿なのかどっちなんだろう。
このまま真っ直ぐ行けばトンネルがある。秀平くんは行きつけの漫画喫茶へ行く気だと分かった。もし彼がエスならきっとあのトンネルでやる。そう思っていた通り、彼はトンネルに入ると秀平くんの背後にスーッと近寄り秀平くんを眠らせた。
一瞬バチバチって明るくなったからスタンガンだろうか。
後ろに倒れ込んで来る秀平くんを小柄な彼が背中に担ぎやってくる。
遠く離れた場所から双眼鏡を使って見ていた私は少し先にある車を見付けた。
キッチンカーだ、タピオカドリンク？


「え、あれなの？」


人通りのない場所に違和感あるなぁとは思ったら、そのキッチンカーに秀平くんを背負った彼が近付いて後ろを開けると、ポイッと中へ放り込んだ。
双眼鏡を首にぶら下げ移動する。
まさかあれとは思わなかったなぁ。急いで追わなきゃ見失う。そしたら秀平くんは終わりだ。



「……あー！ 居ない！ 早い！どっち？！」


急いでバイクに跨って駆けつけた時には既にタピオカカーは居なくなっていて、距離を開きすぎたと後悔。
と言っても今まで誰にも見つからなかったエスが相手だから、あれ以上近付けばバレていたかもだし。
ああ、もう仕方ないか。あの人に頼ろう。

携帯を取り出してある人物に電話をかける。数回のコールで相手は出た。



「あのねお願いがあるの、今から言う車のナンバーの追跡頼める？ え、うーん。わかったわかった。今度ご飯行くから。じゃあよろしくね！」


報酬を払う上にご飯まで行く約束をさせられてしまう。悪い人ではないけど、もう殺し屋家業を抜けようとしている私にとって悪い相手とお付き合いはやめたいんだよ。
とまあ、今はそうは言ってられないから彼の指示に従いバイクを走らせ着いたのは倉庫街。


「ここの地下だね？ うん、ありがとう」


さてと、エス。あなたの正体暴かせてもらうからね。

３◆ ”依頼者”の女。→←◆

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