僕は君のPeterPan3

憎悪は伝染し、やがて復讐に繋がる ページ17

D.O視点

母は物凄くわがままな人だった。俺と兄を露骨に差別し、兄には異常な愛情を示していた。兄がそれに反抗すると人が変わったように兄を殴った。俺は罵られた事はあっても、殴られた事はなかった。母は俺に興味がなかったのだ
兄は繊細で、弱かった。常に俺を気に掛け、母が兄にだけくれたおやつを分けてくれたりした。母が俺を罵った時も庇ってくれた。でも母に1番怯え、現実から逃れたがっていたのは兄だった
かつて死別した恋人に性格も顔も生き写しな兄を溺愛していた母にとって、生活のために結婚した風俗店の上客だった男の息子である俺は憎悪の対象でしかなく、俺は彼女の事を母と呼ぶ事を禁じられていた。幼いながらも俺は彼女の事を心底気持ち悪い生き物として見ていたので、兄を憐れんでさえいた

13年前の兄の誕生日、母は俺に1000円札を握らせ、帰って来るなと言った
『テグンと2人であの子のパパに会いに行くの。あんたは来なくていいわ。邪魔しないでよね』
そう言って真冬にろくな上着も着させられずに叩き出された俺は、1日あの女から解放されるのかと思うと嬉しくて、嬉々として出掛けようとした。だがそこでふと、母に耳にタコが出来るほど聞かされたかつての恋人の話を思い出す。兄の実父である彼は兄を妊娠中に事故で亡くなっている筈だ
そこで母の思惑に気付いた俺はアパートの大家に訴え、警察を呼んでもらった。大家も母の異常性は知っていたので慌てて電話をかけた。警察が踏み込んだ時、母は自分の血の付いた包丁を今まさに息子に振り下ろそうとしているところだった
この事件で母は逮捕され、彼女と離婚した父は兄を施設に放り込むと別の女性と結婚した。そこでの冷遇が俺の性格をすっかり歪めた
高校に入って一人暮らしを始めた俺に、とうに出所していた母が訪ねて来て、俺のせいで失った兄を取り戻せと脅された。正直関わりたくなかったが、彼女が持って来た兄の資料を見て気が変わった。養親に愛され、妹と手を繋いで微笑む彼を見て、13年分の憎悪が爆発した

記憶障害？ふざけるな、お前のせいで俺がどんな目にあったと？それを存在すら忘れるなんて許せない
母親に怯えてばかりの頃に引き摺り戻してやる

それから俺は、兄の養親の娘に近づく為に転校した。その恋人の家に恨みを抱く男を母に紹介し、3人で復讐の機会をうかがった。まんまとAを騙し、多少の狂いはあったものの、今の所計画通りだ
手足を拘束されて眠る姫の頬を撫でた

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