金魚鉢 ((黒)) (ページ10)

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「へっ？」

『やから、織姫』

「え、まって劇でもするんですか？」

『いや、そうやなくて、その格好で星の話をしてもらいたいねん』

「いやいや無理ですって」

『無理やないよ』

押し問答を何回か繰り返し、わたしはスケッチブックに簡単な衣装の絵を描いた。

ひらひらの布たちを使った、可愛らしい衣装。

「似合わないです」

『似合うよ』

それでも首を振るわたしの肩を叩いて、大倉さんがウインクしてくる。

「Aちゃん綺麗な顔してるし大丈夫」

「大丈夫じゃないですって」

『衣装の色なら変えてもええし！黄色でも青でもええわ！』

「そういう問題じゃ…」

自分に自信なんかこれっぽっちもないし

冷めてるわたしにこんな手伝いなんか難しかったのかもしれないと今さらながらに思った。

「他に誰かいないんですか」

『嫌？』

「…まあ、あんまり」

人前できらきらしたことを語るなんて無理だ。

わたしはもうそこまで綺麗な人間じゃない。

『じゃあ、代わり探すから準備だけ手伝ってくれる？
俺、裁縫とか無理やし』

それくらいなら、ということで了承した。

その間、なぜか大倉さんが不服そうだった。