金魚鉢 ((黒)) (ページ9)

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「どうぞ」

『ありがとう』

「ありがとう～」

キンキンに冷やしていた麦茶を2人に出して、3人でちゃぶ台を囲んで座る。

自分の目の前にはペンとスケッチブックを置いて、横山さんの方を向いた。

「どんな感じなんですか？」

『まずは、プラネタリウムに人を集めなあかん。
でも通常営業じゃ集まらへんのは分かってるから、ちょっとしたイベントを開きたい。』

「イベント、？」

『うん。1年で1番みんなが空を見る日って、分かるかな』

毎日、必ずある光景だから

空を見上げないわたしにとってはさっぱりだった。

「さあ、」

『七夕。天の川の話があるから、みんな見てるはず。』

「あぁ、なるほど」

『曇りも多いし七夕の日じゃなくても天の川は見れるっちゃ見れる、でも。イベントするには丁度いいねん』

イベントの内容を話す彼の目は、少年のようにキラキラしていた。

ふたりと知り合いなのだから、わたしよりは歳上のはずだ。

でも、わたしは彼よりもずっとくすんでいると感じた。

胸の奥の押し込めたドロドロとした感情が、ノックするような音が聞こえる。

『やから、当日イベントで販売する七夕限定のお弁当作ってもらいたいねん。それから、Aちゃんには織姫になってもらう』