金魚鉢 ((黒)) (ページ23)

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鏡に映るわたしは、いつもと違っていた。

まるで、別人みたい

「よこやまさ、」

『うん？』

いつぶりだろう

こんなに綺麗にヘアメイクをするのは

こんなに綺麗な服を着るのは

『よお似合ってるよ』

たとえそれがお世辞だとしても

そこにいるわたしはわたしじゃなかったんだ

「…」

『なあ、Aちゃん』

･

･

･

『きみは、変われるよ』

簡単なことば

いつかどこかで聞いたことのあるような、ありふれたことば

わたしはそれに背を向けて、裸足のまま外へ出た。

アスファルトが、じんわりあたたかい。

星は相変わらず満点に輝いていて

わたしはその下で揺れるスカートをひらりと翻してみせた。

ゆら、ゆら

まるで金魚の尾ひれのよう

わたしの小さな世界で

いつもとは違うわたしが泳ぎ出す

わたしがくるりと回る度、スカートの裾が美しく広がる。

何度も、何度も

わたしは目が回るまでスカートの裾を追い続けた。

彼は、そんなわたしを見ながらタバコにまた火をつけた。