金魚鉢 ((黒)) (ページ16)

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fin 16 ページ16

『なあ、これからやったらどれが理想的？』

こぼれないように布から離れたところにコップを置きながら、横山さんが尋ねる。

「衣装の、ですよね。それでしたらこれなんか丁度いいと思いますよ」

わたしから見て右から3番目、淡い色味で透け感のある素材を選んだ。

『あー、これか。これひとつで仕上げる？』

「出来ればいくつか異素材のものを組み合わせて、儚くも強い感じにしたいですね」

『そうしたら、これなんかどうかな。結構厚めで色もビビットで強そうやし。』

「確かに。ポイント使いしてみましょうか」

彼の持ってきた紙袋からは、色々な色、素材のものや装飾品まで出てきた。

一晩でこれだけ集めるのは骨が折れただろう。

それだけ本気だったということだ。

…あぁ、また嫌悪感だ。

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「…ごめんなさい、お手洗いに」

いてもたってもいられず、わたしは小さなポーチを持って外に出た。

もちろん、タバコを吸うためだ。

「…はぁ、」

どうして彼を見ているとこんなに嫌な気持ちになるんだろう

答えはもう出ているのだけど

それを認めるのが嫌だった。

どんなにこころが抜け落ちていると自分でわかっていても

やっぱり人と比べるのは怖いものなのだ。