海兵さんと魔女 (ページ7)

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海兵さんとの出会い--6 ページ7

今日もロシナンテさんがお店に来た。

｢なぁ。おれ、いつもAがくれるゲッカビジンについて調べたんだ｣

一気に身体の熱が引いていくのが分かった。図鑑には花言葉だって絶対載ってる。引かれたらどうしよう。

｢はかない恋って意味もあるらしくて...｣
｢そうなんですか！知りませんでした。勉強になります｣

ロシナンテさんの話を遮るように驚いたフリをする。私の想いが伝わらないように。
ロシナンテさんも私の声に驚いていたが、すぐに笑った。

｢...そうなのか！！良かった！なんかあれだな、花の事をおれがAに教えるなんて不思議な感じだ！！｣
｢私ももっと勉強しないといけませんね｣

ロシナンテさんが可愛く思えて、思わずふふっと笑うと、彼もニカッと笑った。

良かったって、どういう意味なんだろうか

最後までお店に残り片付けをした。今日はご飯を作るのが面倒で、パスタを食べた。レストランから出て広場に行くと、噴水が綺麗に飾られていた。あぁ、もう収穫祭の季節なのか。早いなぁ。もう20時を過ぎたというのに町は賑わっている。年に一度の大きなお祭りだから、皆んな気合を入れているんだろう。
皆んなに挨拶しながら、港の方へ行く。港といっても大層なものでは無く、錆びた鉄骨の小さな橋が掛かっている薄暗い所だ。寧ろ町の人たちは気味悪がってここには近かないから、わたしが落ち着くには丁度良い場所だった。

波の音だけが聞こえる。心地良い。

｢〜〜♪〜♬♩｣

昔から歌う事が好きだ。歌には色んな想いが詰まってる。私の気持ちに合わせて、歌を歌うのが好きなのだ。

｢♬〜〜♪♪♩〜｣

1曲歌い終わり、深呼吸する。もう空は真っ暗だ。きっとお祭りの準備ももう終盤に差し掛かっているだろう。もうそろそろ帰ろうかな。そう思い置いていた鞄と花束を手にして歩き出す。

案の定準備は終わっていて、街灯の明かりだけが付いている。話し声も無い。そんな寂しい道を通り家に帰る。
町外れにある小さな家。鍵を開け部屋の電気を付ける。花で彩られているのに、グレー1色の家。私の｢怖い｣｢逃げたい｣が詰まっている家だ。

そんな部屋を無理やり塗りつぶすかのように花を増やしていく。でも、直ぐにその花もグレーになる。いや、実際には色んな花があってカラフルな部屋なのだが、私にはグレー1色にしか見えなくなってしまった。

私の心は、そんなに黒いのかな。