mirror castle (ページ3)

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ヤマダ青果の車が来なくても、Aの部屋の向こうに見える公園には、いつも近所の若いお母さんたちが子どもを遊ばせに来ている。10時から11時ぐらいにかけて集まり始めた親子たちは、12時にお昼ごはんのために、みんないったんそこからいなくなる。

そうしたら、少しカーテンが開けられる。

最初はそれで心地よかったものが、だんだんと、やっぱりいけないんだと思うように、なぜか、誰に言われたわけでもないのに、なってくる。

おととい、お母さんと見学に行ったスクールに、今日から、本当に行ける気がしていた。

だけど起きたらダメだった。

お腹が痛い。仮病じゃない。本当に痛い。

無理しなくていい、とお母さんには言われていた。

だからそこまで構えずに、Aは朝、二階の自分の部屋から、ダイニングに下りていった。

『お母さん、お腹痛い』

ホットミルクとトーストを用意していたお母さんが、Aの声を聞いて、露骨に表情を無くした。
Aを見ない。

母｢痛いって、どんなふうに？｣

『いつもと同じ』

小声で答える。言い終えないうちにお母さんが続けた。

母｢いつもと同じって、昨日までは平気だったんでしょ？スクールは学校じゃないのよ。行くってAが決めたんでしょ。どうするの、行かないの？｣

矢継ぎ早に責められるように言われると、ああ、お母さんは行って欲しいんだと分かる。
だけど違う。

行かないんじゃなくて、行けない。