ぞっこん【宮侑】 (ページ12)

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角名side

「あんな、俺大学でAちゃ､､､あー､､､烏野マネ！烏野マネと会ったんよ！」

「へえ、良かったじゃん」

柄にもなく声を弾ませる侑に、棒読みで返事をする。
烏野マネか､､､。
ぼんやりと顔は思い出せるものの、彼女の声を聞いたことはない。可愛い方だとは思うけど、タイプというわけでもなかった。

「何が良かったじゃんやねん」
「え、だって侑春高のとき、烏野マネのことちょっと話してたから、好きなのかと思って」

そう言った瞬間、ぐっと侑の息を飲む音が聞こえた。

ーーえ、まじで好きなの？

俺はおかしくなって込み上げる笑いを抑える。
話を聞く限り向こうは侑に好意を持っているわけではなさそうだけど。
侑は今まで女子に困ったことなんて一度もない。
だから、多分どうしたらいいのかわからないんだ。
女子たちは、そんな侑にたくさん困らされてきたんだろうけど､､､と俺はひとりため息をつく。

そっから色々話題はあったけど、俺はどうしてもそのAちゃんという人が恋愛的ではなく気になって仕方なかった。
侑が好きになるような子だから、何かしら魅力はあるのだろう。
春高で見た時は、普通の女子高生って感じだったけどな､､､､､､。
俺は侑の隣に座って問いかけた。

「ね、侑、その子の写真てないの？」
「その子？Aちゃん？」
「そうそう」

ん、と言いながら侑がスマホの中の写真を見せる。
その写真では、Aちゃんはパフェを食べていた。

ーーああ、なるほどね。

たしかに“Aちゃん”は整った顔をしていた。
今まで侑に群がってきた人たちとは違って、穏やかな雰囲気を持っている。
濃い栗色の髪に、同じ色をしたぱっちりと開いた目。
前の印象とは違う。
ちゃんと『女子大生』だな、と思った。

「ふーん、可愛いじゃん」

わざとらしくスマホを覗き込むと、侑は俺の前からスマホを取り上げて、

「好きになるとちゃうぞ！？」

と叫んだ。
なってねえよ、どこの少女漫画だよ。

そんで、この一言で確信した。

やっぱコイツ、“Aちゃん”のことめっちゃ好きじゃん。