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物理。拾肆 ページ16

「…おい、起きろやァ」

『…ん…しなずがわさん?』


ぱちり、と目を開ければ柱のみんなが私の顔を覗き込んでいた。
意識が急に覚醒する。


『あっ…私寝ちゃったんですか、ごめんなさい』

「よもや!気にするな、疲れているのだろう」

「……しっかり休め」


みんなが優しく声をかけてくれた。それに甘えるように、私と不死川さんは抜けることになった。
外に出るとひんやりとした空気が頬をかすめた。そういうのを感じると、やっぱり夜だなあと思う。


『飲みすぎてないですか?不死川さん』

「全然まだいけるわ」

『凄いですねえ』


そこまで言って沈黙が訪れる。
今日もいろいろあったなあ。というか、今日まで五日間色々ありすぎているから。


一週間終わったら寂しいな。


「……っそういうのやめろ」

『何がですか?』

「……口に出すな」

『で、出てました?』


また、沈黙。私の顔には熱が集まる。ちらり、と隣を見ると不死川さんも耳が赤かった。
今回の沈黙は気まずくて、どうにも謝りたくなる。
でも口を開こうとする前に、違和感を感じてどちらともなく立ち止まった。


『「(……鬼)」』


近づいてくる鬼の気配に戦慄する。
私たちは日輪刀を持っているけれど、この状況で刀を振るうのは難しい。
でも。


『不死川さん。刀投げるでもして隙作ってくれませんか。その瞬間間合い詰めてください』

「てめ、何するつもりだ…」

『聞かれるとまずいので言えませんが、信じてくれませんか』


一瞬顔をしかめた不死川さんだったけど、一つため息をついた後頷いた。


「手ェ繋いでるムカつく奴らを発見。いい匂いがするから来てみりゃ女と稀血じゃん幸運だなあ!」


姿形はまるっきり人間のものだけど、気配も淀んだ瞳も鬼のものだ。
それを見るや否や、不死川さんは自らの腕を右腕で握った日輪刀で躊躇わず切った。


真っ赤な血が流れると、鬼はよろける。鬼を酩酊させるほどの特別な稀血。
鬼はよろよろとおぼつかない足取りだ。


雑魚鬼。
私たちはこの状況じゃなければ、単体で一撃だろう。でも場合が場合だから。
不死川さんと私は同時に間合いを詰める。
近づいた私は短刀を鬼の頸目掛けて投げた。


「斬れてないじゃんかあ!!」


そう言って鬼は、気持ち悪い長い腕で私の左腕を掴む。その瞬間、腕に電気が走ったような感じがした。痛みに顔を歪める。でも、鬼は次の瞬間崩れ始めた。


打ち込んだ短刀は、しのぶちゃんから借りたものだから。
毒が鬼を蝕む。

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ナイトウルフ(プロフ) - 最後、、、!一気に読んじゃいました(笑)さねみんイケメン…この話が現実になればいいのにッッッ 素敵な作品をありがとうございます!! (2022年2月13日 1時) (レス) @page28 id: 1bd66c2c15 (このIDを非表示/違反報告)
aya(プロフ) - 夢中になって読みました! 他の柱の物理も読みたいですーーー! (2020年12月3日 0時) (レス) id: 1c30a1e22f (このIDを非表示/違反報告)
闇ちょこ(プロフ) - 番外編のおばみつちゅき(( (2020年7月31日 14時) (レス) id: e0b0a3b941 (このIDを非表示/違反報告)
銀時 - 凄い面白かった!天元が爆笑してるの想像したらめっちゃ笑えてきた! (2020年4月24日 3時) (レス) id: 6c694a1b22 (このIDを非表示/違反報告)
瀬田 - 幸せです (2020年3月24日 22時) (レス) id: 2c549b1da3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:空風まりも | 作成日時:2019年12月14日 20時

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