私は師匠に退かない【HUNTER × HUNTER】

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エビのフリットにアボカドとトマトのサラダ。白身魚は玉ねぎとパプリカを和えてマリネ風に。ミネストローネには沢山の野菜と、食べやすい様にコーンとツナも入れておきましょう。

ミンチ肉に炒め玉ねぎとナツメグと塩コショウ、卵とパン粉と牛乳も。そうでもない筈なのに、こうやってハンバーグを作るのも久しぶりな気がする。あの子達は大きい方がいい？それとも普通のサイズを2個にしようか。いいえ食べ盛りだもの。いくら作ったって足りないわ。チーズを入れてもいいかも知れない。ソースは照り焼き風で構わないかしら。

「ミトさん、干し終わったよ。」
「あら、ありがとう。」
「何かしようか？」
「いいわよ座ってて。たくさん歩いて疲れたでしょ。」
「そんなに疲れてないよ。」
「いいからいいから。」

フライパンに蓋をして火が通るまでの間に、オーブン内のスポンジの様子を確認する。

「甘い匂い…ケーキ？」
「スコップケーキにするつもりだけどね。桃とラズベリーを頂いたからそれを乗せましょうか。」
「いつになく豪勢だね。どうしたの？」
「色んなお祝いよ。」
「お祝い？」

そうよ。とだけ答えてミトは調理に戻ってしまう。祝う事なんてあったっけ？と首を傾げる少女を尻目に、『親の心子知らず』とは正にこの事だろうとミトは思った。

祝うべき事よ。あなた達が友達を連れてきて、難関と呼ばれる試験に受かって、五体満足でまた帰ってきてくれたのだから。

祝うぐらい、させてちょうだい。

「なら生クリーム泡立てるよ。ミキサー無くてもすぐ泡立てられるんだよ私。」
「そう？頼もしいわ。ならお願いするわね。」
「クリームチーズ入れていい？」
「好きにアレンジして頂戴。あなたの作ったものはなんだって美味しいもの。」
「へへ、やった！」

そう言って嬉々としながら小鍋にひと掴み程のラズベリーを入れて、ジャムを作り始める少女。生クリームに混ぜると、きっと美味しいだろう。

砂糖はどこだっけ、ブランデーはこのくらい？せかせか動く少女のつむじは愛らしく健やかで、どれだけ大人びていても一人の子どもなのだと改めて認識させられる。

そんな少女をミトは愛おしく思って、苦しく思って、堪らずその細い髪を撫でた。

「わっ、え、どうしたの」

突然の事に驚いて思わずミトを見る。その表情は母親の様に柔らかく、何処か悲しげだ。

「…なんでもないのよ。」

ミトの視線は薄くなった火傷痕へ向けられ、一連の行動の意味を察した少女は言葉を詰まらせた。

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