17.最終日 ページ1
.
夢であってくれ。1時間前にタイムスリップさせてくれ。
何度そう思ったことか
けど現実は変わらない
【最終日】
私はチャニョルさんにさらわれた
車に入って危険を感じた時はすでに手遅れ。
ドアの鍵は閉まっているし、スマホが入ったバッグは腕を引っ張られた衝動で道路に落としてしまったまんまだし、終いには手錠をかけられた
車もカーテンがかかっているから、後部座席からはどこに向かっているのか何も検討がつかない
ただカーテンから差し込む街灯のリズムからして、高速道路かトンネルを走っている気がする
そして何より、オッパの容体が心配
あれはどう見ても事件だった。
シャツの穴が空いた部分だけ血の色が濃くて、撃たれたとしか思えない
ぎりぎり心臓から外れていたけど、出血量がひどかったし絶望的な未来しか見えない
あの人間味のない顔が思い出される
美しい顔が、血の気を失って真っ白だった
自分の彼氏をアンドロイドだと思ってしまった
なんであんな状態で店まで来たの？
(「よかった…、A…ちゃん…無事で………」)
最後に聞いたあの言葉が気になる
私にも何か関係があって無事を確かめに来た…？
でも、そうだとしたら辻褄が合ってしまう
現に今私は無事ではないから
オッパはこれを予想していたか知っていたんだ
もしかして昨日の不安そうな顔はそういうことだったの？
それでも現実に残されたのは絶望のみ
彼の命も危ういし、私も何されるか分からない
『あ…』
ポタッと涙が一粒落ちた
「ごめんね、泣いても変わらないよ」
チャニョルさんがそう言ったけど、謝るくらいならここでいいから下ろして欲しい
「何も聞かないの？行き先とかあいつの容体とか」
こくりと頷いた。何されるか分からないから聞けるわけないじゃん
「………寝てていいよ」
人の本能的な緊張はすごいようで、深夜で車に揺られているというのにいくら眠くても何時間も目が開いたままだった
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 96人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もか | 作成日時：2024年3月13日 20時
