早く言えよ！【knmc】

▷六言目 ページ6

　


　
友達に「剣持くんをデートに誘う宣言」をしてから一週間が経ちました。
　


未だ誘えておりません。ここまで来たら罵倒も暴力も甘んじて受け入れる。


毎朝友人から「いつ誘うんだお前。」と圧をかけられて精神的に割と限界な上、この一週間剣持くんがやたら話しかけてくるからもれなく心臓と情緒も限界だ。

なんで？

いつもそんな話しかけてこないじゃん。はっきり言って有難すぎるから一生コレがいい。


え、なになに。気まぐれなの？いつも僕と話すときに上手く話せてねえ可哀想な女に慈悲をかけてやるかってことなの？？嘘剣持くんはそんなこと言わない。


自分の情緒がブレブレすぎて酔いそう。


　


「安達さん。」


「ぅはい！！」


「すみません、実は次の数学の教科書を忘れてしまって。見せてもらえませんか？」


「えっ…私に…？」


「僕の隣、あなたしか居ませんよ。」


　


気持ち悪い反応を返す私にもにこりと完璧な笑みを浮かべる剣持くん。

「あなたしか居ませんよ」の部分だけ切り取って今日一日脳内でリピートすることが決定した。


剣持くんがマリア様の生まれ変わりだって言われても信じちゃうなぁ！！世界救済レベルの微笑みをありがとう！！！


　


「私ので良かったら全然どうぞ！なんなら貸しますし…！！」


「ありがとうございます。じゃあ半分だけ貸してくれますか？…よいしょ。」


「…えっ、なにして、」


「何って…見せてくださるんでしょう？」


　


僕このままじゃ見えないので…。

そう言って私の方に机を寄せてくる剣持くんに本格的に脳がバグり始めた。


あっそんな近……手が綺麗…いやそんな不埒な！そんな目で同級生を見るだなんてそんなあっいい匂いがした………もうほんと誰か私を殺してください。


先生の解説なんて全く頭に入らず板書も止まっている私の横で、綺麗な字できっちりノートをまとめている剣持くん。この差ですよ。


全く意識されてないんだなと少し悲しくなるも、そこがいいとも思ったりする。


私にデレデレな剣持くんはなんというか解釈違い。

いや、前提がありえないんだけれども。


　
そんなくだらないことばかり考えていたら、いつの間にか授業が終わってしまっていた。


復習しっかりしようと誓っていると、肩をつんと控えめにつつかれた。


その方向を向くと、柔らかい笑みを浮かべている剣持くんが。

　

じゅわっ。

私の中の何かが溶けるような音がした。多分HP。

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