▷番外編4 ページ48
「安達さん。帰りましょう。」
「うん。」
授業もホームルームも、同じクラスだから当たり前に同じタイミングで終わるというのに、剣持くんはいつも私より早く準備をしてこうして声を掛けてくれる。
クラスメイトに挨拶をしながら、剣持くんの後ろに着いて教室を出た。
通学路をいつものように並んで歩く。
「剣持くん、今日この後予定ないなら私の家に来ない?お母さんがケーキ買ってきてくれたんだ。」
「いいんですか?」
「うん勿論。」
楽しみです、と顔を綻ばせる剣持くんに、つい私の頬も緩んだ。
剣持くんは甘いものが好きだ。謎のプライドあるのか、本人は絶対にそんなこと言わないけど。
そういうとこ可愛いよなぁ。
剣持くんが嬉しそうにしているのが嬉しくて、意識せずとも声が弾んだ。
「プリンと、ショートケーキと、あとフルーツタルトとモンブラン。今日お母さんもお父さんも帰り遅くて家居ないから好きなの選べるよ。チーズケーキは剣持くんの家にお土産で…。」
「ちょ、ちょっと、……ちょっと待ってください。」
「あっ、ごめん、喋りすぎた…。」
「いやそうではなく。」
急に私の言葉を遮って立ち止まってしまう剣持くんに焦る。
俯き気味の剣持くんが、片手で顔を覆い大きなため息を吐いた。手の隙間から微かに赤くなった頬が見える。
訳がわからず困惑していると、なんとも言えない微妙な顔をした剣持くんと目があった。
「………親、居ないのに家呼ぶとか、そういうの。変な勘違いをしてしまいそうになるので。」
「……あ、」
「僕もその、まあ、一般的な男子高校生ですので。思わせぶりなというか、そういった行動は控えてくださると助かるといいますか、あなたのためだといいますか…。」
珍しく歯切れの悪い言葉に頬が熱くなった。
た、確かに。
軽率だったかもしれない。
でも実はもう今日の朝の段階で、剣持くんの分だといってケーキのお皿と紅茶のカップを用意しているのだ。
申し訳なさと恥ずかしさで目線が下がる。
なんとか声を絞り出した。
「………い、以後気を付けるので、今日のところはその………我慢、して…来ていただくことって可能でしょうか。」
「………いいでしょう。」
剣持くんの硬い了承の声を聞いて、再び歩き出す。
まだ蝉も鳴いていないような季節なのに、無言で歩く帰り道は異様に暑く感じた。
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せそ(プロフ) - むーさん» コメントありがとうございます!試行錯誤しながら書いてたのでそう言っていただけると安心します…!嬉しいです!神作と言っていただけたのが過言にならないように頑張りますね!? (2022年7月18日 18時) (レス) id: f1e07720ab (このIDを非表示/違反報告)
せそ(プロフ) - 199594198593さん» コメントありがとうございます!おかえりなさい!!(?)最高嬉しいです〜最高を書き続けられるように頑張りたいですね… (2022年7月18日 18時) (レス) id: f1e07720ab (このIDを非表示/違反報告)
むー(プロフ) - ふへ…ふへへ…(キショ)すごい好きです…!knmtの解釈一致すぎてもう最高です、神作をありがとうございます…!!! (2022年7月13日 22時) (レス) @page48 id: c6860a711c (このIDを非表示/違反報告)
199594198593(プロフ) - 番外編まで最高だァ… (2022年7月12日 9時) (レス) @page48 id: d656d21813 (このIDを非表示/違反報告)
せそ(プロフ) - ミウラさん» コメントありがとうございます!大好き嬉しいです〜!番外編まで読んでくださってありがとうございます!あと数話お付き合いください💖 (2022年7月4日 0時) (レス) id: f1e07720ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:せそ | 作成日時:2022年4月12日 18時