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▶四十二言目 ページ42

 


 
歩き慣れた通学路を二人で歩く。
 


体育祭後は打ち上げの予定だったが、僕と安達さんは断った。


断る際に「二人で抜けるとかそういうこと?」など散々揶揄われたが、僕はそれを確かめるために打ち上げを断ったんだ。

しかし、話を切り出すタイミングを完全に見失ってしまっている。
 


隣で静かに前を向いて歩く彼女を横目で盗み見た。


そんな僕の視線に気付いたのか、彼女がこちらを向く。


 


「なに?剣持くん。」


「……勝手に断っちゃいましたけど、安達さんは打ち上げ行きたかったかなって。」


「あ〜、剣持くんが断っても断らなくても、夜遅くなるから結局行かなかったよ。」


 


言い出しづらかったから剣持くんが言ってくれて助かったと柔らかく笑う彼女に、つい歩を止めた。


不思議そうにする彼女の手に触れる。


 


「嫌じゃないんですよね。」


「……嫌じゃ、ないよ。」


「こういうことを、当たり前にしてもいいんですか。」


 


我ながら回りくどいなと思ったが、思春期真っ盛りの男子高校生が「僕達付き合ってるんですよね?」とストレートに聞くのは恥ずかしすぎた。
 


バクンバクンとうるさい心臓の音が、身体の中で反響するような変な感覚がする。


彼女の手を握った手にこちら側に引っ張るようにして力を込めると、彼女は瞬きをした後じわじわと頬を染めて。


……それから、小さく頷いた。


 
舞い上がりそうになるのをぐっと堪える。

 

このままだと彼女のことを衝動的に抱きしめてしまいそうで、繋いだ手を離した。


それを追いかけてまた手を握られるから、次こそは引き寄せて彼女の肩に頭を乗せる。

恥ずかしいから、腰に手は回せなかったけど。

 

二人ほとんど棒立ちのまま、僕が彼女の肩に頭を乗せる形でしばらく時が経った。

彼女の髪が頬を掠めて酷くくすぐったい。


遠慮がちに服を握られて、思わずため息を吐いた。


 


「……。」


「……人来るから…。」


「もう一回聞きたいところですね、あなたの告白。」


「っ普通剣持くんが言うとこだよ!私好きって言われてないし、」


「好きですよ。…はい、あなたの番です。」


 


喉の奥が詰まったように黙ってしまう彼女に少し笑って、手を引いて歩き出す。


恋人同士になっても、彼女は中々好きと言ってくれなさそうだなと長期戦に腹を括った。

 
 

_____…待つのは得意ですからね。何せ、実績がありますから。


 
 

Fin.

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せそ(プロフ) - むーさん» コメントありがとうございます!試行錯誤しながら書いてたのでそう言っていただけると安心します…!嬉しいです!神作と言っていただけたのが過言にならないように頑張りますね!? (2022年7月18日 18時) (レス) id: f1e07720ab (このIDを非表示/違反報告)
せそ(プロフ) - 199594198593さん» コメントありがとうございます!おかえりなさい!!(?)最高嬉しいです〜最高を書き続けられるように頑張りたいですね… (2022年7月18日 18時) (レス) id: f1e07720ab (このIDを非表示/違反報告)
むー(プロフ) - ふへ…ふへへ…(キショ)すごい好きです…!knmtの解釈一致すぎてもう最高です、神作をありがとうございます…!!! (2022年7月13日 22時) (レス) @page48 id: c6860a711c (このIDを非表示/違反報告)
199594198593(プロフ) - 番外編まで最高だァ… (2022年7月12日 9時) (レス) @page48 id: d656d21813 (このIDを非表示/違反報告)
せそ(プロフ) - ミウラさん» コメントありがとうございます!大好き嬉しいです〜!番外編まで読んでくださってありがとうございます!あと数話お付き合いください💖 (2022年7月4日 0時) (レス) id: f1e07720ab (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:せそ | 作成日時:2022年4月12日 18時

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