▶四十一言目 ページ41
「剣持!クラスで集合写真撮るってよ!応援団の皆で肩組もうぜ、肩!」
「……。」
「なんだよその冷たい目…。傷付くじゃんか…。」
そりゃあ冷たくもなるだろ。
肩を組んでくる腕を雑に振り払って、学ランを着直した。
遠くでチアの女子と集まって写真を撮っている安達さんの方をぼんやり眺める。
体育祭の割と序盤の方に告白イベントが発生したから、その後の体育祭は恋人らしく過ごせると思うじゃん、普通。
まさかお弁当すら一緒に食べられないとは思わないじゃん。
僕は応援団の皆と、安達さんはチアの皆と。
その後もお互いパフォーマンスの確認や競技やらでものすごくすれ違って、結局話せたのはあの一回だけだ。
どうなってんだよ、まじで。
タイミング悪すぎるだろ。
やっとのことで想いが通じ合ったというのに。彼女が僕に好きって言ってくれて、僕も彼女に好きだと…______。
…………………言ってねえな。
ふと、恐ろしい可能性が頭を過ぎる。
安達さんはまだ僕らが付き合ってないと思ってたりしないよな?いやいや、まさかまさか…。
散々思わせぶりなことを言っても、僕の気持ちを察するまでに相当な時間がかかった彼女のことを思い出した。
…………これは早急に確かめなければ…。
「ということで安達さん。今日一緒に帰りませんか?」
「な、何がということなのかはわからないけど、うん。」
いいよ、と少し頬を染めて微笑んでくれる彼女に、写真撮影中だということも忘れてだらしなく頬が緩む。
隣では筋肉の塊のような男達が熱く肩を組んでいるなんて信じたくない。
それに巻き込まれているなんてもっと信じたくない。
「……。」
「っえ、」
なんの脈絡もなく、するりと自然に手を握られる。
驚いて彼女の方を見ると、照れ臭そうに笑った彼女が「せっかく近くにいるのに、さっきから変な顔してるから。」と小さく囁いた。
「はい撮るぞー、笑えー。」
カメラのカシャッという音で我に返った。
まずい。
完全に彼女の方を見ていて、カメラの方を見ていなかった。
写真を確認した先生が片眉を上げてこちらを見てくる。それになんとか愛想笑いを返した。
「…ふふっ。」
「……笑わないでくださいよ。あなたのせいですからね。」
こんなに振り回されると思わなかった。
仕返しという意味も込めて、強めに彼女の手を握り返した。
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せそ(プロフ) - むーさん» コメントありがとうございます!試行錯誤しながら書いてたのでそう言っていただけると安心します…!嬉しいです!神作と言っていただけたのが過言にならないように頑張りますね!? (2022年7月18日 18時) (レス) id: f1e07720ab (このIDを非表示/違反報告)
せそ(プロフ) - 199594198593さん» コメントありがとうございます!おかえりなさい!!(?)最高嬉しいです〜最高を書き続けられるように頑張りたいですね… (2022年7月18日 18時) (レス) id: f1e07720ab (このIDを非表示/違反報告)
むー(プロフ) - ふへ…ふへへ…(キショ)すごい好きです…!knmtの解釈一致すぎてもう最高です、神作をありがとうございます…!!! (2022年7月13日 22時) (レス) @page48 id: c6860a711c (このIDを非表示/違反報告)
199594198593(プロフ) - 番外編まで最高だァ… (2022年7月12日 9時) (レス) @page48 id: d656d21813 (このIDを非表示/違反報告)
せそ(プロフ) - ミウラさん» コメントありがとうございます!大好き嬉しいです〜!番外編まで読んでくださってありがとうございます!あと数話お付き合いください💖 (2022年7月4日 0時) (レス) id: f1e07720ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:せそ | 作成日時:2022年4月12日 18時