▷三十九言目 ページ39
「っはあ〜…!」
「お疲れ様剣持くん!」
椅子に勢いよく座って足を伸ばす剣持くん。
滅多に見ない少し行儀の悪い姿にきゅんとした。
リレーの結果は二位。
五位から剣持くんが一人抜いて、もう一人と並んだところでアンカーの陸上部の子にバトンが渡った。
そこからのうちのクラスの盛り上がりようは凄くて、結果が発表された瞬間男子全員がアンカーの子の所に走って行って胴上げをしていた。
そのあとアンカーの子が喜色満面の笑みで「剣持から流れ変わった。」と発言したため、結果剣持くんも胴上げやらなんやらで散々もみくちゃにされて、今やっと戻ってきたところだ。
ちなみにアンカーの子はまだ胴上げされてる。
女子も男子もそっちの方に行ってしまって、テントには私と剣持くんの二人だ。
お疲れの剣持くんに、興奮冷めやらぬまま若干前のめりでタオルを渡す。
剣持くんは軽く目を見開いたあと、小さく「ありがとうございます。」と呟いた。
「頑張りましたよ、僕。」
「うん、頑張ってた!すごかった。」
「格好良かったですか?」
「う、うん、かっこよかったよ。」
「一番?」
な、なんか今日すごく欲しがる。
勢い任せに答えていたが、答えるにつれて段々と高くなっていくハードルに狼狽えた。
私が渡したタオルで首元の汗を拭っている間も剣持くんは私から視線を逸らさない。
きゅっと口を一文字に結んで、汗でまとまった前髪の間で目を切なげに細める顔に胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
息が苦しくなってきた。
「………一番?」
「っ、」
ダメ押しとでも言うように首を傾げる剣持くんに、私の方が白旗を上げた。
「……………け、剣持くんが一番かっこよかったよ。」
「……ふふ。そうじゃないと困ります。」
心底嬉しそうに笑う剣持くんの頬が朱に染まっていて、これは走ったからだと自分に言い聞かせた。
テントの中は音が篭っているような感じがして、皆のはしゃぎ声が遠くに聞こえてくる。
流れる沈黙がくすぐったくて、落ち着かなくて。それでもどこか心地いい。
「安達さん、格好良い人好きですか?」
「え?…うんまあ、そりゃあ…。」
「じゃあ一番格好良かった僕のこと、好きになってくれますか?」
こちらを見つめる深い緑の瞳に吸い込まれそうになる。
自然と口が動いた。
「………好きだよ、前からずっと。」
「……。」
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せそ(プロフ) - むーさん» コメントありがとうございます!試行錯誤しながら書いてたのでそう言っていただけると安心します…!嬉しいです!神作と言っていただけたのが過言にならないように頑張りますね!? (2022年7月18日 18時) (レス) id: f1e07720ab (このIDを非表示/違反報告)
せそ(プロフ) - 199594198593さん» コメントありがとうございます!おかえりなさい!!(?)最高嬉しいです〜最高を書き続けられるように頑張りたいですね… (2022年7月18日 18時) (レス) id: f1e07720ab (このIDを非表示/違反報告)
むー(プロフ) - ふへ…ふへへ…(キショ)すごい好きです…!knmtの解釈一致すぎてもう最高です、神作をありがとうございます…!!! (2022年7月13日 22時) (レス) @page48 id: c6860a711c (このIDを非表示/違反報告)
199594198593(プロフ) - 番外編まで最高だァ… (2022年7月12日 9時) (レス) @page48 id: d656d21813 (このIDを非表示/違反報告)
せそ(プロフ) - ミウラさん» コメントありがとうございます!大好き嬉しいです〜!番外編まで読んでくださってありがとうございます!あと数話お付き合いください💖 (2022年7月4日 0時) (レス) id: f1e07720ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:せそ | 作成日時:2022年4月12日 18時