▷三十八言目 ページ38
背中に注がれる視線に気まずくなりながらも、なんとか言葉を絞り出す。
「あ、ありがとう。ていうかあの、服預かるの私でいいの?」
「最初は椅子に置いとこうと思ったんですけど、なんか今席バラバラになってるみたいで。」
すみません、迷惑でしたか?と言って困った顔をする剣持くんに、慌てて了承の意を示す。
なんか断ろうとしてるみたいじゃん。もっと素直に応じればいいものを。
自己嫌悪に陥りつつも、剣持くんから受け取った応援団の衣装である学ランを握りしめて幸せな気持ちになるんだから、我ながら器用だ。
「それに僕、自由席なら安達さんの近くに座りますし。安達さんが預かってくれるなら色々都合がいいといいますか。」
「………へっ!?」
サラッと爆弾を投下してくる剣持くんに、裏返った間抜けな声が漏れる。
選手入場アナウンスが流れて、剣持くんが走って行った後も、その背中から目を離すことができなかった。
「………ラブラブじゃんか〜〜〜!!」
「これで付き合ってないってまじ?」
「ちょ、ていうか剣持リレー出るんじゃん。安達さん応援してあげなきゃ!」
呆けていると背中を押されて、最前列に座らされる。
さっきまでそこに座っていた男の子が、私が来た瞬間「お、剣持の彼女じゃん。」とか言って席を譲ってくれて、どれだけ昨日のことが知れ渡っているんだと眩暈がした。
彼女じゃないって!!
歓声が飛ぶ中、リレーがスタートする。
剣持くんは最後から二番目、アンカーの前だ。
待って待って、ポジションからかっこいい。
やはり一番最初の競技というだけあって、どのチームもガッツリ運動部で固めてきてて見応えがあり、いつの間にか拳を握りしめていた。
「剣持次じゃない!?」
「うちのクラス五位か…。全学年合同で三年とやるのはやっぱキツいよなぁ。」
「っ…。」
半分諦めたように呟くクラスメイトに言い返したくなるのをグッと堪えた。
確かにそうだけど、けど…。
大丈夫かな、と所定の位置で軽く準備運動をしている剣持くんを見つめる。
ばちっ。
視線が交わる。
「…!」
剣持くんが「まかせろ。」と口パクをして微笑んだ。
息が止まる。
剣持くんにバトンが渡った。
「…………速ぇなアイツ……かっけー…。」
呆然と呟くクラスメイトに、今度は同意せずにはいられなかった。
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せそ(プロフ) - むーさん» コメントありがとうございます!試行錯誤しながら書いてたのでそう言っていただけると安心します…!嬉しいです!神作と言っていただけたのが過言にならないように頑張りますね!? (2022年7月18日 18時) (レス) id: f1e07720ab (このIDを非表示/違反報告)
せそ(プロフ) - 199594198593さん» コメントありがとうございます!おかえりなさい!!(?)最高嬉しいです〜最高を書き続けられるように頑張りたいですね… (2022年7月18日 18時) (レス) id: f1e07720ab (このIDを非表示/違反報告)
むー(プロフ) - ふへ…ふへへ…(キショ)すごい好きです…!knmtの解釈一致すぎてもう最高です、神作をありがとうございます…!!! (2022年7月13日 22時) (レス) @page48 id: c6860a711c (このIDを非表示/違反報告)
199594198593(プロフ) - 番外編まで最高だァ… (2022年7月12日 9時) (レス) @page48 id: d656d21813 (このIDを非表示/違反報告)
せそ(プロフ) - ミウラさん» コメントありがとうございます!大好き嬉しいです〜!番外編まで読んでくださってありがとうございます!あと数話お付き合いください💖 (2022年7月4日 0時) (レス) id: f1e07720ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:せそ | 作成日時:2022年4月12日 18時