▶三十一言目 ページ31
この感じも久々だな、と中庭で彼女が来るのを待つ。
彼女との関係も、大分進展したと思う。
この先へ進めるために足りないのは、少しの勇気ときっかけ。
……あとタイミング。
僕ら二人は何かとタイミングが悪い。
それが僕のせいなのか彼女のせいなのかは分からない。若干彼女寄りな気もするけども。
まあ、きっかけならいくらでも作れる。とりあえず数を打てばなんとでもなるだろう。
色々思考を巡らせていると、足音が聞こえてきた。
「剣持くん。」
「安達さん。」
「ごめん、私が呼んだのに遅れちゃって。ちょっと先生に呼ばれて…。」
「大丈夫ですよ。お疲れ様です。」
走ってきた彼女の手にはプリントの束があって、それには「保健だより」と書かれていた。
雑用なら手伝えば良かったなと少し後悔する。
まだ息を切らしている彼女の頬は、走ったからという理由だけでは説明がつかない程赤くて、思わずごくりと唾を飲み込んだ。
お出掛けが決まったあとから、彼女はそのことで頭がいっぱいだったのか放課後に僕を呼び出すことはなかった。
久々で耐性が弱まったかもしれない。
明らかに正常時より早い鼓動を無理矢理落ち着かせて、笑顔を作る。
「今日はどうしました?」
「………剣持くんが昨日帰りに言ったこと、考えた。」
そう呟く彼女の表情は、下を向いていてわからない。
どう言う返事を返すのが正解なのかがわからなくて戸惑ってしまう。
今まではこんなことなかった。
だって、彼女は表情が豊かで考えていることが手に取るようにわかったから。
「………それで?」
捻り出した言葉は、愛想だとか配慮だとか諸々が欠落したそっけないものだった。
もう少し優しく言えばよかったと後悔しても遅い。
沈黙が流れて、背中に汗が伝った。
「わかんなかった。」
「……そうですか。」
「意味がじゃなくて、意図がわからなかった。」
………それって、意味はわかったっていう…?
言葉を処理するのに少し時間がかかった。
その間に彼女によって詰められた距離と、指先に触れた熱に目を見開く。
「………それで……こういうことされても嫌じゃないくらいにはその、………私のこと好きでいてくれてるってことだと思ったんだけど……違うかな。」
触れた指先にかつてないほど胸が高鳴って、やっぱり僕は彼女が好きなんだなとどこか冷静な頭で考えた。
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せそ(プロフ) - むーさん» コメントありがとうございます!試行錯誤しながら書いてたのでそう言っていただけると安心します…!嬉しいです!神作と言っていただけたのが過言にならないように頑張りますね!? (2022年7月18日 18時) (レス) id: f1e07720ab (このIDを非表示/違反報告)
せそ(プロフ) - 199594198593さん» コメントありがとうございます!おかえりなさい!!(?)最高嬉しいです〜最高を書き続けられるように頑張りたいですね… (2022年7月18日 18時) (レス) id: f1e07720ab (このIDを非表示/違反報告)
むー(プロフ) - ふへ…ふへへ…(キショ)すごい好きです…!knmtの解釈一致すぎてもう最高です、神作をありがとうございます…!!! (2022年7月13日 22時) (レス) @page48 id: c6860a711c (このIDを非表示/違反報告)
199594198593(プロフ) - 番外編まで最高だァ… (2022年7月12日 9時) (レス) @page48 id: d656d21813 (このIDを非表示/違反報告)
せそ(プロフ) - ミウラさん» コメントありがとうございます!大好き嬉しいです〜!番外編まで読んでくださってありがとうございます!あと数話お付き合いください💖 (2022年7月4日 0時) (レス) id: f1e07720ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:せそ | 作成日時:2022年4月12日 18時