早く言えよ！【knmc】

▷二十九言目 ページ29

　


　
「剣持くんせめてこれ、タオルとココア。あ、甘いもの大丈夫だった？温かいお茶もあるわよどうぞ。ねえさっき剣道やってるって言ってたわよね、かっこいいわね〜。今度Aと試合見に行こうかしら〜。」


「ありがとうございます。甘いもの好きです。お茶もありがとうございます。あ、はい剣道やってて…試合来てくださるんですか？是非…。」


「ねえお母さん剣持くん困ってるから！！」


　


剣持くんを待たせているから早くお風呂に入りたいのに、仮にも初対面の剣持くん相手にマシンガントークをかますお母さんが気になってお風呂に行けない。


お母さんのマシンガントークに、若干押され気味だが律儀に全部返す剣持くんに申し訳なさばかりが込み上げてくる。

いいんだよ無視してくれても…。

いやそんなこと言っても剣持くんはできないんだろうけど……そんなとこが好き！！


　


「あの、僕は大丈夫なので安達さんお風呂入ってきてください。風邪ひいちゃいます。」


「あっ、う、うん。」


「剣持くん。私も安達さんなのだけれど、娘のことはAって…。」


「お母さん！！！」


　


この人は本当に！！！？


ウインク飛ばしてこないでよ！全然ファインプレーとかじゃないから！！
　


お母さんが剣持くんに何かやらかさないか気が気じゃないが、ここで足踏みしていてもしょうがないとお風呂に急ぐ。


お風呂に入ってる途中もお母さんの笑い声が聞こえてきて、お風呂入ってるのに変な汗をかいた。


お風呂からあがって、急ピッチで身体を拭いて服を着替える。


そこで今自分が化粧をしていないのに気づいて、慌ててパウダーとリップだけ塗った。

お風呂上がりにお化粧してないのは当たり前だけど、流石にすっぴんはしんどすぎる。


バタバタと慌ただしくリビングに行くと、和やかな空気で談笑する剣持くんとお母さん。


　


「お、お母さん。……剣持くん。」


「あら、早かったわね。」


「安達さん、ちゃんと温まりましたか？あ、ダメじゃないですか。せっかくお風呂で温まっても髪の毛乾かさないと意味ないです。」


「う、あ、うんわかった乾かす…乾かします…。」


　


剣持くんの口数が増えてる。

母親のコミュ力に脱帽。なんで私はそれを受け継がなかったのか。


我が家にものすごく馴染んでいる剣持くんに、これが旦那さんだったら…と考えかけてやめた。

やばい…私まで思考がおかしくなってる…。

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