▷二十七言目 ページ27
濡れた服越しに骨張った手が居心地悪そうに動いて、びくりと肩を揺らした。
服越しだけど、女の私の手とは全然違うのがわかる。ていうか指ながっ。ほそっ。…………距離が近いなぁ!!!!
腕に降ってくる人の体温で温くなった水滴に、じわりと胸の奥がむず痒くなって、足と手の先が痺れてくる。
ぽつっと一際大きな水滴が落ちてきた時、後ろで小さく息を吸う音が聞こえた。
「…………あの、安達さん。さっき足痛めたりとかしました?」
少し掠れた、困った声。
気まずそうに放たれた私を気遣う言葉に、ドッと冷や汗が吹き出た。
「いっ、いや!痛めてない!ごめんありがとう!!」
「あ、いえ。」
慌てて剣持くんから離れた。
不安定な体勢から急に抜け出したため少しよろけてしまったが、なんとか立て直す。
「結構濡れましたね。予報では晴れだったはずなんですけど…。」
うーん、と唸りながら髪をかき上げる剣持くん。髪から落ちた雫が首筋を通って鎖骨に流れる。
何故か見てはいけない気がして目を逸らした。
半歩後ろに下がったとき、靴の中まで濡れていることに気付いて思わず顔を顰める。
肌に張り付いてくる服も髪も気持ち悪くて、服もメイクも悩んだ時間全部無駄になった気がして、なんだか虚しくなってきた。
嫌な感情を吐き出すように小さく息を吐いてスカートを絞ると、剣持くんと目が合う。
胸中を見透かすような目にぎくりとした。
「安達さん、せっかく綺麗な格好してくれてたからもうちょっとじっくり見れば良かったです。…んふふ、なんて。」
「えっ。……ありがとう。私も剣持くんのことじっくり見れば良かったな。」
………何気に恥ずかしいこと言ってんなこれ??
気付いた瞬間急に恥ずかしさが襲ってきて目を逸らすと、剣持くんの控えめな笑い声が聞こえてきた。
「じゃあ次ですね。」
「うん。………えっ、次?」
「はい、次。」
にっこりと微笑んで当たり前のように「次」の話をしてくれる。
「まだゲームセンター行ってませんしね。服もお互いじっくり見てませんし。」
「…そう、だね。」
「約束ですよ、安達さん。」
剣持くんが差し出した小指に、恐る恐る自分の指を絡めた。
二、三回上下に揺らされてゆっくりと離れる。
指が離れた後も、目頭が熱くなってきても、指から目が離せなかった。
1801人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「2j3j」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
せそ(プロフ) - むーさん» コメントありがとうございます!試行錯誤しながら書いてたのでそう言っていただけると安心します…!嬉しいです!神作と言っていただけたのが過言にならないように頑張りますね!? (2022年7月18日 18時) (レス) id: f1e07720ab (このIDを非表示/違反報告)
せそ(プロフ) - 199594198593さん» コメントありがとうございます!おかえりなさい!!(?)最高嬉しいです〜最高を書き続けられるように頑張りたいですね… (2022年7月18日 18時) (レス) id: f1e07720ab (このIDを非表示/違反報告)
むー(プロフ) - ふへ…ふへへ…(キショ)すごい好きです…!knmtの解釈一致すぎてもう最高です、神作をありがとうございます…!!! (2022年7月13日 22時) (レス) @page48 id: c6860a711c (このIDを非表示/違反報告)
199594198593(プロフ) - 番外編まで最高だァ… (2022年7月12日 9時) (レス) @page48 id: d656d21813 (このIDを非表示/違反報告)
せそ(プロフ) - ミウラさん» コメントありがとうございます!大好き嬉しいです〜!番外編まで読んでくださってありがとうございます!あと数話お付き合いください💖 (2022年7月4日 0時) (レス) id: f1e07720ab (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:せそ | 作成日時:2022年4月12日 18時