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▶二十二言目 ページ22

 


 
実際、調子に乗ってないと言ったら嘘になる。

 

ただ僕の一挙一動に面白いくらいに意識を引っ張られている彼女を見ると、つい嬉しくなって調子に乗ってしまうのだ。


これだってそう。調子に乗った。

それでも、差し出した手を彼女が取ってくれないのではないかという心配は全くなかった。

 

呆気にとられていた彼女が、徐々に言葉の意味を理解したようで「あ」だとか「え?」だとか言葉にならない音を発する。

頬を赤らめたと思ったら今度は、もしや揶揄ってるのかと訝しげな顔をする。


コロコロと変わる表情は見ていて飽きない。……僕が彼女から目を離せなくなった理由のひとつ。


 


「………いいの?剣持くん。」


「何がですか?」


「人に見られるよ。」


「大丈夫ですよ。」


「大丈夫ですよって…。」


 


何故そんな無謀なんだと彼女の顔が訴えかけてくる。それにまた笑ってしまう。


見られないよ、って意味の大丈夫ではなかったんだけど。


 


「お店まであとちょっとだよ。」


「だからこそでは?」


「…………そうかも。」


 


心配だなこの子。

悪い奴に騙されないか?いや、今まさにそれが起こってるんだけども。


恐る恐るといった様子で僕の方に伸びてくる手をじっと見つめる。僕から取ったりはしない。ただじっと待つ。


 

指先が触れた。


……………うわあ。

 

第一関節までが重なる。


…………待ってこれ、これはちょっと…。


 
彼女の手が、僕の手の半分まで乗った。


………っスーーーーーーッ……ハァーーー……。


 

ついに完全に重なった彼女の手が、握るようにきゅっと力を込める。それをなんとか握り返した。


ゆっくりと視線が交わる。


彼女も、多分僕も、なんとも言えない微妙な顔をしていた。


 


「…………行きますか?」


「…………うん。」


 


お互い無言で歩き始める。


さっきまで回していた気が全く回らなくなって、話題の提供だとかエスコートだとか、前日に何回も確認したはずの道すら頭からすっぽ抜けて、ただただ彼女と繋いだ手のみに意識を向けていた。


じわりと上がる体温は留まるところを知らなくて、手から広がるようにどんどん熱くなっていく。


………なんだかんだ僕も緊張してたの忘れてたな……。
 


手を繋いでから終始無言のまま歩いて、やっとのことでお店の前に着いた時、どちらからともなくするりと自然に離れた手に、安堵と同時に寂しさを覚えた。

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せそ(プロフ) - むーさん» コメントありがとうございます!試行錯誤しながら書いてたのでそう言っていただけると安心します…!嬉しいです!神作と言っていただけたのが過言にならないように頑張りますね!? (2022年7月18日 18時) (レス) id: f1e07720ab (このIDを非表示/違反報告)
せそ(プロフ) - 199594198593さん» コメントありがとうございます!おかえりなさい!!(?)最高嬉しいです〜最高を書き続けられるように頑張りたいですね… (2022年7月18日 18時) (レス) id: f1e07720ab (このIDを非表示/違反報告)
むー(プロフ) - ふへ…ふへへ…(キショ)すごい好きです…!knmtの解釈一致すぎてもう最高です、神作をありがとうございます…!!! (2022年7月13日 22時) (レス) @page48 id: c6860a711c (このIDを非表示/違反報告)
199594198593(プロフ) - 番外編まで最高だァ… (2022年7月12日 9時) (レス) @page48 id: d656d21813 (このIDを非表示/違反報告)
せそ(プロフ) - ミウラさん» コメントありがとうございます!大好き嬉しいです〜!番外編まで読んでくださってありがとうございます!あと数話お付き合いください💖 (2022年7月4日 0時) (レス) id: f1e07720ab (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:せそ | 作成日時:2022年4月12日 18時

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