▷二十一言目 ページ21
「映画、面白かったですね。」
「……そ、そうだね…。」
あんなことを言われたのに全く集中できませんでした、とは言えなくて曖昧に言葉を返す。
ぶっちゃけ覚えてない。
覚えてるのは、氷が溶けてめちゃくちゃ薄くなったジュースと、あと剣持くんの目…_______。
思い出してぶわっと体温が上がる。
さっきは距離の高さに固まったけど、今改めて思い出すと、まつ毛長いなとか綺麗な色だったとか、優しげに細められた目がなんというかこう、こう!!!!
……ていうか何気にすごいこと言われてない!!?
「後でならどれだけでも見つめてくれても構わないので。」ってどう言う意味!?
「じゃあ次はカフェですけど、安達さんお腹空いてます?」
「……ちょっとだけ。」
「んふ、ちょっとですか。じゃあ歩いてるうちに頑張ってお腹減らしてください。」
「…ふふ、うん。」
とぼけたことを言って笑いかけてくれる剣持くんに笑みが溢れる。
最近の私は剣持くんに情緒を左右されすぎだよなと思うけど、全然嫌じゃない。むしろ楽しい。
やっぱり好きだなと思っていると、剣持くんの表情が固まった。
「……えっ、何?」
「……いや、別に…。ただあの………やっと笑ったなと思いまして。」
はにかみながらそう言う剣持くんに、ショックを受けた。
確かに私は今日、剣持くんにしかめっ面か焦った顔しか見せてない。剣持くんはそれをずっと気にして、気を遣ってくれてたんだ。
好きな男の子と一緒にいるのに、笑顔でいられないなんて自分が不甲斐なくて仕方ない。
思えば剣持くんはずっと笑ってくれていた気がする。……まるで私を安心させようとするように。
「ごめん、剣持くん。今日一日気を使わせちゃったよね。気にしてくれてありがとう。」
「いや、そんな。」
「……緊張してたから、あんまり笑えなかった。けど、今からは楽しむことにする。あっ、いや今までも楽しかったんだけど!」
「……。あははっ!」
ポカンとしていた剣持くんが、弾けたように笑い出す。
困惑していると「すみません」と謝られた。でもまだ全然笑ってる。
「そうですね、じゃあ僕も楽しむことにします。」
スッと手が差し出される。
意味がわからずその手と剣持くんを交互に見つめていると、笑いすぎたのか少し頬が上気した剣持くんが笑みを深めた。
「手、繋ぎましょう。」
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せそ(プロフ) - むーさん» コメントありがとうございます!試行錯誤しながら書いてたのでそう言っていただけると安心します…!嬉しいです!神作と言っていただけたのが過言にならないように頑張りますね!? (2022年7月18日 18時) (レス) id: f1e07720ab (このIDを非表示/違反報告)
せそ(プロフ) - 199594198593さん» コメントありがとうございます!おかえりなさい!!(?)最高嬉しいです〜最高を書き続けられるように頑張りたいですね… (2022年7月18日 18時) (レス) id: f1e07720ab (このIDを非表示/違反報告)
むー(プロフ) - ふへ…ふへへ…(キショ)すごい好きです…!knmtの解釈一致すぎてもう最高です、神作をありがとうございます…!!! (2022年7月13日 22時) (レス) @page48 id: c6860a711c (このIDを非表示/違反報告)
199594198593(プロフ) - 番外編まで最高だァ… (2022年7月12日 9時) (レス) @page48 id: d656d21813 (このIDを非表示/違反報告)
せそ(プロフ) - ミウラさん» コメントありがとうございます!大好き嬉しいです〜!番外編まで読んでくださってありがとうございます!あと数話お付き合いください💖 (2022年7月4日 0時) (レス) id: f1e07720ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:せそ | 作成日時:2022年4月12日 18時