早く言えよ！【knmc】

▷二十言目 ページ20

　


　
アクション映画を選んだ理由は三つあって、迫力があるから割と脳死で見られるっていうのがひとつ、隣を気にして集中できなくても大体雰囲気でわかるっていうのがひとつ、そして恋愛映画を選ぶ勇気がないというのがひとつだ。


そして私は今、その自分の判断が甘かったことを知る。


　


「………おぉ……。」


　


ビリビリと鼓膜に響く轟音と共に、画面の中で建物が爆発して崩壊していく。


それを見て小さく吐息を漏らし目をキラキラさせている剣持くん。もう言いたいことはわかりますね。

　

集中できない！！！

　

いやいや、目がキラキラしてるのはあれだよね、スクリーンの光が反射してるだけで。可愛く見えちゃうのは私が剣持くんのことを好きだからで。………だから何！？

理論的に説明しようとしても、結局今映画に集中できないことに変わりはないから意味がないだろうと頭を抱えた。


自分の肘置きがどれかわかんないから飲み物も置けないし。お陰で自分の手の温度で氷が溶けて、中のジュースが薄味になってた。


　
映画は面白い。

話題になってただけあって、迫力があるし、人物の心情描写が綺麗でストーリーもいい。


ただ全然集中できていないせいで内容は頭に入ってくるけど物語に入り込むことはできないというか。なんか、ネタバレ読んでる感じ…？


総括して、集中できない。


……集中できない(三回目)。


　
気になって何度も隣を見てしまう。また懲りずに視線を隣に向けた。

　


ばちっ。


　

_______目、合った。

　

思わず息を呑む。


剣持くんは何を考えているかよくわからない表情で私を数秒見つめた後、何かが解けるように笑った。


　


「______……僕じゃなくて、映画を見てくださいね。後でならどれだけでも見つめてくれても構わないので。」


　


周りに配慮してひそめられた声が、私が聞き漏らさないように近距離で発せられる。


小さい子を宥めるような声色と、ふわりと鼻先を掠めた香り。そして初めて至近距離で見た緑色の瞳に私の呼吸が止まった。


　
固まったまま何も言えない私を見て小さく笑った後、剣持くんはまたスクリーンに向かう。


　
それから思い出したように動き出す心臓は当然のように早くて、気がついたら映画は終わっており、手には極限まで薄くなったジュースが残されていた。


　


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週の半ばは更新厳しいです…。土日頑張ります…。

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