病気のチート個性少年 (ページ7)

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No.5 ページ7

｢ただいま。｣

｢お帰りなさい。A。｣

いつものように母さんが笑って言った。

けど違う。俺は知ってる

これは母さんの本当の笑顔じゃない。
きっと今も無理して笑っている。

本当は誰よりも辛いはずなのに。

｢ご飯、できてるから。｣

｢ありがとう。｣

静かな食卓。
今にもなって、なぜか急に父さんを思い出して泣きそうになる。
父さんが事故にあったときいたのは、ちょうど夕飯の支度ができたときだった。

母さんと二人で父さんの帰りを待ちわびていた。

もう昔の話なのに、乗り越えたはずなのに夜が怖いのはなぜだろう。

｢A。｣

急に話しかけられて思わず驚いてしまう。

｢なに？｣

いつもは帰ってもろくに話なんてしないのに。

｢雄英どうだった？｣

不思議な感覚に襲われて胸が苦しくなった。

｢入試の実技、ちょっとやり過ぎてさ、みんな俺のこと化け物だと思ってたらしい。｣

｢そう。｣

母さんが少し悲しそうに言った。

｢でも、ちゃんと化け物じゃないって分かってもらえたし。みんな強くて面白い。思ってたよりも楽しいよ。｣

｢そっか。よかったね。A。｣

母さんが笑って言った。
心なしかいつもより嬉しそうだった。

俺も嬉しかった。
母さんと久しぶりに会話することができたから。

　

自分でも分からない。

母さんと話そうとすると胸に何かこみ上げて苦しくなる。

母さんが俺に向き合ってくれようとしているときさえ、母さんを苦しませているという事実が胸に突き刺さって癒えることはなかった。