私はモブになる

3 me 少し昔の話を ページ5

あれは私が5歳の時

高熱に魘され目が醒めると、そこは見慣れた天井だった

気づけば目の端から涙が溢れていた

ああ、そうだった
私は私の全てを思い出したのだ
“本当の両親”の事も、勤めていた会社の事も

今私が横たわっているこの場所もこの世界のことも
特にこの世界の事なんか過去から未来まで手に取るように分かる
当たり前だ、私の世界ではここは漫画の中なんだもの

何だか長い夢を見ていたようだが
脳が覚醒していくとそれは夢では無かったと
“ここは現実なのだ”と実感せざるをえなかった


エ「A！！！目が覚めた！！！よかったぁ！！！！！！」

見慣れたオレンジの触覚が私の目の前にゆらゆらしている

まだ5歳の小さな腕と小さな手が私の体をいっぱいに包み込んだ

『っ…！エマっ！！！』


エマを力強く抱きしめ返し、せっかく渇いた頰の上をまた濡らした

久しぶりに流れた涙は暫く止まる事は無かった。


エ「…A？？どこか痛いの？？
もしかしてまだ熱あるの？？？？」

あまりにも泣きすぎたせいか、エマは私から少し体を離して真面目に心配をしてくれている

『ううん、少し怖い夢を見たの…
でももう大丈夫よ…エマ』

私は笑顔でそう言うと、最後にもう一度という風にエマを抱きしめた



絶対に守る



そう心に決めた






少ししてママが来てエマを強制連行した後
1人になった部屋で改めて脳内の整理を試みた



ここは間違いなく“あの”約束のネバーランドの世界
で、GFハウス の中。
しかも嬉しいやら悲しいやらエマたちと同い年
私の歳からして原作が始まるまでに後6年程
出来れば3人が無事に逃げ切り、尚且つもっと沢山の子どもたちを逃がせるように手助けをしたい
できることなら クローネ 、そしてママも…
が、漫画の通り進めば、私が何もしなくてもエマたちは無事に逃げられる
私の知っている話まではノーマンも含めて少なからずハッピーエンドの方向に進むはず

寧ろ私が動くことによって下手すれば脱獄が失敗するのでは…

何よりも一番怖いのはこの後のストーリーが大きく変わってしまうこと…




ここまで考えて私はベッドに背中から倒れた

ベッドの軋む音が耳を突いてきた


『結局は何もしないのが一番なのかもしれない』



何もしない


私と言うイレギュラーを最大限にモブ化させることにより、3人の関係性はもちろん、脱獄への計画・行動が原作と異ならないようにすること

これに尽きると判断した









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