ころころわんこ《N.Y》 (ページ41)

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｢A！｣

倒れ込んだAを抱きおこして

背中を優しくさする。

やっぱり過呼吸が出たか、と思い

とにかく｢ゆっくり息吸ってな。ゆーっくり…｣

と優しく声をかける。

それでもやっぱりヒューヒューと

喉から嫌な音がしていた。

｢おいアレ、西野過呼吸じゃね？｣

｢え、西野ちゃんやばいじゃん…！｣

周りの皆はオロオロとこちらを見るだけで

何もしてくれない。

痺れを切らした俺は、大きな声で言った。

｢誰か使ってないタオルとか持ってへん!?
無かったら誰か先生よんできて！
んでAの水筒も！はやく！！｣

別に過呼吸は死に至るわけじゃない。

ただ、酷くなれば救急車を呼ばなきゃならない

事態にも陥るかもしれない。

早急な措置が大事なのはどんな事でも共通している。

｢私の使って！あとこれ水筒！｣と

Aの友達の伊藤が言うので

タオルを借りて口元を覆う。

ペーパーバックは素人がやると良くないと

聞いたことがあったからだ。

それでもなお呼吸が直らないので

ずっと声がけを続ける。

｢大丈夫やからゆっくりな、ゆっくり。
ほら、大丈夫大丈夫。｣

遅いリズムで背中をトントンと優しく

叩いてやるとそれに合わせて呼吸が少しづつ

おさまってくるのがわかる。

｢な、A、俺のことわかる？
俺は誰？｣

喋ると過呼吸は落ち着くので

Aに喋らせようとしてみた。

すると彼女は、『ゅーじ……ふ、…ｯゆーじ！！』と

精一杯、頑張って声を出して俺の名前をよんでくれた。

するとそれで一気に呼吸が安定し、過呼吸が収まる。

『ごめ……ｯゆーじ……』

｢大丈夫やで。……ね、落ち着いた？｣

『うん、でも……』

彼女が言いたいのはきっと手足のことだ。

俺が支えて抱きとめていないと

彼女は、手足が痺れているから

倒れ込んでしまうだろうし、今でも

背中に回そうとしてくれている手は

地面に放られたままだ。

｢ちょっとだっこするな、少し我慢してや。
……よいしょ、ｯと｣

身体の力が抜けて少々重たくはあるが

姫抱きにして保健室の方へと歩く。

｢西田かっこーいい！｣

空気の読めないクラスのお調子者が

クソみたいな言葉を発したのでそちらを睨みつけた。

｢何もせんかった奴が呑気に
おちゃらけとるんとちゃうぞお前

俺がそう言えばみんな黙りこむ。

・

ちょっと、怒りすぎたかもしれない。