ころころわんこ《N.Y》 (ページ37)

今日:8 hit、昨日:5 hit、合計:69,970 hit

○ ページ37

有志がオーバーワークを始めたのは

石川祐希という、私でも名を知る、

愛知県の……確か、星城という高校で

ずば抜けたセンスと力量を見せつけた選手と

会ってからだった。

有志が焦る理由も、分かるような気がした。

だって有志は、この学校のバレー部で

勝つためにここに来たと言ったから。

『有志、まだ焦らなくていいんじゃないかな。
………だって有志はいっぱい頑張ってるじゃない。』

西田｢A……｣

私は有志を抱きしめながら背中を優しくとんとんする。

有志は驚いていたに違いないだろうに、

私の背中にゆっくりと腕をまわした。

『言ったでしょう、私はあの日
石川選手を見ていたんじゃなくて、
石川選手とプレーする有志を見てたって。

誰も、”有志”と”石川祐希”を比べてなんかないよ。』

私が宥めるようにそういえば有志は、

ごめん、って一言。

その日以来、有志は無理をしなくなり、

部活に参加し、練習に励んだ。

·

そして大会の日を迎えた。

有志は、1年生ながら、殆どの試合のスタメンを

勝ち取り、

試合中の苦しい場面、決めて欲しい場面で

ことごとくサービスエースや力強いスパイクで点を重ねた。

｢優勝、▽▽高校。
代表者は登壇してください。｣

そして私たちの高校は、全勝をおさめて優勝に輝いた。

大会主催者がマイクで優勝チームの発表を行うので、

キャプテンと副キャプテンがそれぞれ

トロフィーと賞状を受け取っている。

｢続きまして、チームごとのMVP、並びに
今大会のMVPを発表致します。
＿＿、＿＿、｣

次々とチームのMVPが発表されていく。

私は、ドキドキとしながら聞いていた。

｢そして今大会MVP、チームMVP受賞者、
▽▽高校、西田有志。登壇してください。｣

西田｢ｯあ、はい！！！｣

有志はちょっと驚いてステージへ上がった。

賞状を受け取る有志の笑顔は

眩しくはじける向日葵のようで。

それでも、大会終了後に一緒に帰宅している最中

｢ほんまに同時にとれちゃった！｣と

ニコニコ嬉しそうにする有志はやっぱり子犬のようだった。