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夏だし、何があるかわからないので

とりあえず行きの道にあるコンビニで


天然水とスポドリを買って学校へ向かった。



学校に着き、体育館の方へと向かう。



ドアの向こう側で、ボールを


床に叩きつける音が響いているのが、


ドア越しにでも分かった。



体育館の重たいドアを開けて、


そこでサーブの練習をしている彼に声をかける。




『…有志、』


有志は一瞬、「何でお前が」という顔をしたけど、


すぐに真顔に戻る。



「……何でおるの。」



いつもよりもワントーン低い声で話す彼は


心底機嫌が悪いようだが、オーバーワークを止めるのが

目的なので、こんなことで引き下がるわけにはいかない。




『キャプテンに聞いたの。』


「はぁ…キャプテンか。
……A、帰ってええよ。俺まだ練習するし。」


見たことのないくらい不機嫌で


今にも怒り出しそうな有志。


怖気付きそうになるけど、仮にも私は有志の恋人で。

彼の弱い部分まで受け止められなければ、それは

本当に「恋人だ」とは名乗れないのだ。


『帰らないよ、有志と一緒じゃなきゃ。
…ね、今日はこの辺りでやめておこう?
その様子じゃあ水分もロクにとってないんでしょう。』


館内に水筒やらペットボトルやらが無いのを見る限り、


練習をしている間、水分を取っていないようだ。


『こんな暑い中、水分も取らずに練習なんて
干からびて熱中症になりかねないよ。



何も言わない有志に追い討ちのように言葉を続けて投げかける。


「……ッるさいな、俺は練習する言うてるやん!
もうはよ帰ってや!迷惑にしかならん!!」


有志はそう言って手に持っていたボールを


床に力強く投げつけ、


体育館に響くくらいの声量で私に怒鳴る。





___有志は焦って、心の中で葛藤している。



私には痛いほど、有志の焦りが理解できた。




そうだ、追いつかなければならない不安に


やる気とも呼べないやる気を駆り立てられ、


オーバーワークをするのだ。





有志は「しまった」といった顔で


私を見た。







私にはその顔が、有志のその表情が、



何よりも、愛おしく感じて。






私は有志の元へ駆け寄って、有志を力いっぱい抱きしめた。

○→←☆



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作者名:ばばば | 作成日時:2019年12月11日 0時

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