季節カレシ

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歩くたびに ぴちゃぴちゃ弾く水しぶき。

それが 今日は不思議と大きな音に聞こえる。



岩ちゃんが持っていた折り畳み傘に

異性の人とするのは初体験の相合い傘だから


落ち着かなくて身を縮めながら入って。



少しだけ傘を私の方に傾けて


自分の肩は濡れているのに

それでも私を濡れないようにしてくれているところは

岩ちゃんの然り気無い優しさ。



それがわかると、


じめじめ蒸し暑いって言うより、

なんだか温かくて ぽかぽかする。



岩ちゃんもちゃんと傘に入れるように

肩がぶつかるくらい間に開いていたの距離を縮めた。

　




「俺さ、」


「ん？」


「雨って嫌いなんだよな」








突然そんなことを言う

岩ちゃんの横顔を見上げる。


真っ直ぐ前を見つめている真剣な顔は

見とれてしまうくらい、とてもかっこよくて。









「でも今日の雨は悪くないって思う」


「どうして？」






でもそんな表情は

まばたきをすれば柔らかくなっていて

優しくこちらを見つめていた。





「好きなヤツとこうやって肩並べて、

　一緒の傘に入って、一緒に帰れるから」





くしゃくしゃな笑顔と不意打ちの言葉に

今までに無いくらいの胸の高鳴り。



岩ちゃんってズルいよなぁ。


緊張で強ばってた表情筋が

だらしないくらい ゆるゆるだよ。







「な、Aは どう？」






聞き返す岩ちゃんの得意気な表情は

見透かした告白の答えを待ってるみたいで。


私は迷わずに答えた。






「うん、私も好きだよ」






だって岩ちゃんが隣にいてくれたから


今日 補習があって残ってたのも、

じめじめ蒸し暑い雨も、明日の学校ことも、



全部ぜんぶ、前向きに考えられたから。


岩ちゃんってすごい。





隣に向かって頬を緩めると、

すっかり空から太陽が顔を出していた。








‐End ‐


６月カレシ【岩泉一】

こーた@しぐシグ





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