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暖かな陽射しが心地好い季節。ぽかぽかして気持ちいね、眠くなる、だなんてのんびり言葉を交わしながらゆったりと歩を進める。
重なった体温をもっとと強請るように、そっと指を絡めて所謂恋人繋ぎ、なんてやつにしてみれば。
またくすくすと笑いながらもきゅ、と僅かに力が込められた指先がなんだかこそばゆい。
「ね、界人くんさ」
「ん?」
「...気づいてる、でしょ。だから今日誘ってくれたの?」
顔出しをするようになってから、人の目に一層敏感になった。
元々人の顔色を伺ってばっかりで、あまり自分に自信が持てなくて。それでも何か少しでも変われるきっかけになれば、って自分から大輔くんに相談して露出を始めたけれど。
やっぱり相も変わらず人の目は少し怖くて、本当に受け入れてもらえてるんだろうか、とか。俺のこと好意的に見てもらえてないんじゃないか、とか。
根っからのネガティブ思考に本当嫌気がさして、自己嫌悪に陥る悪循環。
大輔くんも気にかけてくれて、なのに逆にそれが迷惑をかけてるんじゃないかって。でも大輔くんにそんなこと言ったら怒られちゃうから。
それでもこんな思考簡単には変えられなくて、誰にも言えないまま負の感情は燻ってく一方だった。
「俺はさ、Aが大好きだから」
「...」
「Aに笑顔でいて欲しい。そんで、ちょっとでも気が休まる場所があればいいなって」
「ふ、界人くん、過保護だね」
「浪川さんほどじゃあないけど笑 Aが安らげる場所が俺だったらいい、なんて」
「優しすぎ、」
「お前は自分に厳しいから、その分俺が優しくしてあげたいの。ね、たまにはこうやってのんびり休んでもいいんだよ」
「...うん」
あたたかくてやさしい、陽だまりのような声。ふと顔をあげてみれば、なんとも愛おしそうな、慈愛に満ちた瞳がどうしようもなく嬉しくて。
やっぱり、適わないなあ。出会った時からずっと、界人くんは俺の傍にいてくれた。
大輔くんにこそ言えない悩みがある時。年の離れたお兄ちゃんには遠慮してしまう時。こうして少し、自分が嫌になってしまった時。
いつだって俺の傍で、俺の事を肯定して愛してくれる界人くんがいるから、俺は。
「ね、スタバで甘いもんも食べてい?」
「しゃーねえなあ笑」
愛しい体温が傍から離れないように、しっかりと絡めた指を繋ぎとめた、あたたかい日のこと。
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ナシラ(プロフ) - もう更新されないんですか?めちゃめちゃ好きな作品なので更新してくれると嬉しいです! (9月30日 15時) (レス) id: 16950d514c (このIDを非表示/違反報告)
ナシラ(プロフ) - 更新楽しみに待ってます! (9月30日 15時) (レス) id: 16950d514c (このIDを非表示/違反報告)
みゆ(プロフ) - リクエスト難しかったのに書いてくれてありがとうございます!とっても良かったです!!さんたくゲストは気長に待ちますのでゆっくりで良いですよ! (2023年4月2日 1時) (レス) @page38 id: f4342f2c6a (このIDを非表示/違反報告)
穂香(プロフ) - リクエストお応えしていただきありがとうございます!!!最高でした!これからも楽しみにしていますね🙌🏻 (2023年4月1日 22時) (レス) @page41 id: 321f55f0ce (このIDを非表示/違反報告)
穂香(プロフ) - いつも楽しく拝見させていただいています!例にも書いてある、現場で学校の課題をする堀川くんの様子をツイートするやつ見てみたいです!ご自身のペースで全然大丈夫ですので、これからも頑張ってください!応援しています📣💜 (2023年3月19日 20時) (レス) @page37 id: 321f55f0ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほし | 作成日時:2023年2月22日 22時