sweet memory

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最寄り駅に着いて、電車を降りた。


時計を見たら、もう23時を廻っていた。


「金曜日はやっぱり忙しいなぁ・・・」


飲み帰りの人たちを横目に、足早に家に向かう。


マンションに着いて、エレベーターホールに向かった


その時


「・・・あっ」


昨日の黒マスクのひと。


ヘッドフォンをしてて、わたしに気付いていないようだ。


声、かけた方がいいのかな・・・


迷っているうちに、エレベーターの扉が開いた


エレベーターに乗り込んで振り返った時に、黒マスクの彼はやっとわたしの存在に気付いたみたいで、軽く頭を傾けてきた。


「こんばんは・・・」


挨拶してみたけど、聞こえてないだろうな。
軽く音漏れしてるし。


何の曲、だろ。


「・・・こんな遅い時間に、帰り？」


急に話しかけられて、ビックリして振り返ると
いつの間にかヘッドフォンを外していた彼。


「あ、今日は金曜日だったので、仕事が終わらなくて・・・」


「ふーん・・・大変だね」


そっちから聞いておきながら、何それ。
だいたい、昨日から思ってたけど、何か偉そうなんだよね、このひと。
サングラスのひとの方がよっぽどいい人そうだったよ・・・


まあいいや、もう鍵の準備しておこう。


そう思って、鞄をゴソゴソ漁ってみた


けど。


・・・うそ・・・


鍵がない。


え、待って、落とした！？


・・・あ・・・


ロッカーに鍵差しっぱなしで、そこに家の鍵もあるんだった・・・


戻らなきゃ、ダメかな


ひとりで焦ってた、その時。


「鍵、失くしたの？」


・・・やっぱり分かりますよね、だって鞄ゴソゴソ探しまくって青ざめてるなんて、鍵ないですよわたしー！って言ってるようなものだもんね


「会社に置いてきちゃったみたいで(笑)アホですよね(笑)取りに帰ろうかな〜アハハ・・・」



笑いながら、半分泣きそうになっていたわたしに
彼がかけてきた一言。


「じゃあ、ウチ、来る？」

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