好きになっても【白膠木簓】

♯１９_side.S ページ21

「私、嫌いな人ってそんなに居なくて
ずっと好きか無の感情だけだったんです」


「ほう」


「…なのに、弟切だけは変に意識してイライラして…放っておけばいいのにそれが出来なくて」


「へぇ」


「簓さんに何かされたらどうしようって不安だし、無駄にかわいいのもムカつく…
こんな気持ちになってる自分が嫌なんです」


「そうかぁ」



何なんでしょうね
そう言ってマネちゃんは机に突っ伏した

なんとなくやけど、マネちゃんが抱えてるイライラの名前が分かってしもた

それって多分



「嫉妬なんちゃう？」



はい？と顔を上げた

少し寝ぼけた表情



「そんなに俺のこと好きなん？」



冗談キツいやろ？

ツッコむとこやで



「あぁ……

そうかもしれませんね」



え？

予想もしてなかった答えに耳を疑う

けど突っ伏すわけでもなくじっと俺の方を見つめて微かに微笑んで…

なんやねんそれ



「あんまこっち見んとって」



ため息混じりに小さく呟いた



「ん？すみませんもう一回おねがいします
全然聞き取れなかった」


「なんでもあらへんよ
それよりマネちゃん眠いやろ？そろそろお開きや」



はよ一人になりたい



「眠くないです」


「嘘はあかんで？
タクシー呼んだるから、眠いなら寝とき」



頼むから、寝てくれへん？



「…簓さん」


「んー？」



このままやと…



「顔あかい…？」



あぁ、見つかったやんか



「っ……俺も酔うてるみたいやわ」


「…あさり頼みます？」


「しじみやろ」


「あさりです」



ほんま、アホらし



．



．



．



．



それからタクシーを待ってる間に
マネちゃんはぐっすり眠りについた



「…しゃーなしや、悪く思わんとってな？」



スヤスヤと寝息をたてる彼女の頭をそっと撫で、タクシーのおっちゃんに目的地(俺ん家)までお願いした

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