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私達は、日が暮れるまでの間ふたりで過ごす。

その場所は、公園だったりファミレスだったりと日によって違う。場所はどこだって良かった。ただひとつ、徹底的に家を避けることが出来れば。



「…何歌おうかな、」

そう呟いてソファー席に座ると、すぐ隣に涼くんが座った。手のひらは私の太腿をいやらしく撫でる。



「歌うつもりで来たんだ?」
「ううん、全然」


私の返答に満足そうに笑えば、惹かれ合うようにして唇が触れる。この瞬間だけはいつも、身体の力が一気に抜けてしまいそうになる。

涼くんの柔らかくて温かい手が制服とシャツの裾を一緒に捲ると、手を止めた。いくつもの青い痣が視界に入る。実の親に、作られたものだ。器用に、衣服に隠される部分だけに残されるのが腹立たしい。涼くんはそのひとつひとつを消毒するみたいに優しくキスを落とす。



「A、綺麗だよ」

涼くんの優しい微笑みは、いつだって私を安心させてくれる。頰に添えられた手を取って、口付ける。途端に涼くんは何かを思い出したかのように不安な表情になって、「Aは俺のこと、要らない?」と問い掛けてきた。

私達の呪いは、些細なことをきっかけに闇に押し戻してくるのだ。



「必要だよ。私、涼くんがいなきゃダメになっちゃう」


弱々しく丸まった大きな背中をぎゅっと抱き締める。

その言葉に嘘偽りは無かった。大人の餌食になった私達は、どうしてもひとりでは生きていけない。だから、痛みや傷を半分こして潰されないように踏ん張っている。涼くんがいなきゃ、本当に私はダメになってしまうんだと思う。




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作者名: | 作成日時:2019年9月1日 4時

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