124話 ページ25
佐藤side
抱き締める腕に力が籠る。
彼女の足首に残る痛々しい痣。
今まで、どれだけ怖かったか、苦しかったか。
俺には到底想像がつかない。
その痣が消えるまで、Aの心が落ち着くまで、離れない。
これが、今出来る、精一杯のことだから。
だから…
佐藤「…泣けばいい。」
自分の思いを押し退けてまで俺に謝らなくたっていい。
俺が、全部受け止めるから。
佐藤「顔、見ないからさ、全部、吐き出していいよ。
思いっきり、泣けばいいんだ。」
そう言ってそっと彼女の頭を自分の肩に押し付ける。
ポン、ポンと一定のリズムで背中をなるべく優しく叩く。
すると、少し腕の中の体が震えるのが分かった。
貴方「…ッ、ひっ…ぅ」
最初は小さな嗚咽だったが、段々と大きく泣きじゃくり出す。
彼女が泣いている間、何も言わず、ただ抱き締めた。
…しばらく泣き続けていたが、落ち着いたのか、嗚咽が聞こえなくなった。
佐藤「……落ち着いた？」
貴方「…ッ、うん。」
スン、と鼻を啜って顔を上げる。
目元が赤く色付いていた。これだけ見てもどれだけ涙を流したのか分かる。
貴方「ありがとう、勝利君。」
佐藤「どーいたしまして」
クシャ、と頭をひと撫でする。
ふんわりと笑顔を浮かべた彼女にドキリとする。
ギュ、と拳を握って彼女の顔を見つめると、彼女は「？」と見つめ返してくる。
顔に血が集まって赤くなっているのが分かった。
彼女の頬をペチリと両側から挟んで額を合わせる。
佐藤「…A、好きだっ…！」
貴方「………」
……無反応。
え、ちょ、これってフラれる感じなのか？
心臓が捕まえられた小鳥のように早回しで脈打つ。
すると、挟んでいる頬がボッ！と熱くなるのが分かった。
え？と思い、額を離して彼女の顔を見た。
そこには頬を真っ赤に染めるAがいた。
可愛過ぎて釣られて自分の顔も更に熱くなった。
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作者名：ユリ | 作成日時：2021年6月5日 18時
