お兄ちゃん、おかしいよ？最終章【S.S】 (ページ23)

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122話ページ23

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気付けばまだ涙が流れ続けていた。

生理的な涙などでは無かった。

ただ純粋に、哀しかったのだ。

健人「………A、泣いてるのか…？

何で、泣くんだ…？何が悲しい？大丈夫だよ、俺ッ、俺がAを守ってあげる…！！

Aを泣かせるモノ全部殺すよ！Aを汚す害虫も全部、全部！！

大嫌いなんて言ったのだって嘘なんだろ！？…そうだ、そうなんだ。嘘…嘘なんだッ…ハハハッ

だってAがそんな事言う筈無いんだ…！」

口元を歪めながら兄は言う。

そんな彼を警察官は黙らせるように更に押さえ付ける。

貴方「お兄ちゃ…」

そう言って近寄ろうと手を伸ばすと、私の身体を支えている別の警察官に制止される。

「午後12時56分。監禁罪及び傷害罪の罪で現行犯逮捕する。」

ガチャリ、と兄の両手首に手錠が嵌められる。

…そこからの流れはあっという間だった。警察官の人達が兄を立たせ、無理矢理歩かせる。

兄は無抵抗だった。目は虚ろで、何処を見ているのか分からなかった。

でも、勝利君を殺そうとしたこの部屋を出て行く直前、目を見開き、笑顔で私の顔を見て確かに言った。

健人「…絶対、帰ってくるから。待っていて」

…まだ、自身の首に私を絞め上げた手の感覚が生々しく残っている。

そして、勝利君の応急処置がその場で行われた。

幸い、左肩の心臓に近い方で無かった為命は取り留めた。

…実に、一年と四ヶ月振りに私の足を繋いでいた鎖が完全に外された。

しかし、外した両足首には痛々しく痣が残っていた。

…驚いた。

足、というものはこんなにも軽くて、自由なのかと。

その後、私達は救急車で搬送され、病院で手当てを受けた。

私は特に怪我をしていなかった為、三日程でベッドから出る許しがもらえた。

その許しが出て、まず向かったのが勝利君の元だ。

あの後は忙しくて全く話が出来ていなかった。

彼の病室へ行くと、もう大丈夫なのか、上体を起こしていた。

私の姿を目に映すとあからさまに顔を明るくする。

佐藤「A！」

私自身もとても嬉しくて駆け寄ろうと足を一歩踏み出したところでピタリと止まる。

…そうだ。

勝利君がこんなことになったのも全て私のせいではないか。